サロンの初回割引はいつやめる?クーポン価格を自社予約に移す決め方
サロンの初回割引をやめるタイミングは、割引の役目から決まる
掲載媒体のクーポン価格で来ているお客様を、自社の予約(LINE・Web・電話)へ移していきたい。そのとき手が止まるのが、自社側でいくらを見せるか、という問題です。サロンの初回割引をやめるタイミングを日付から決めようとすると、たいてい決まりません。決まらないのは、その割引が何のためのものだったかを1つに絞れていないからです。この記事でわかることは3つです。(1)割引を3種類に分けて役目を1つに決める手順、(2)自社で見せる価格を「定価を見せて引く」か「割引後を載せる」かで選ぶときの3つの判断材料、(3)続ける・やめる・作り替えるの3択で出口を設計する方法です。紙のメニュー表と手書きの台帳でも、同じ判断ができます。
結論:先に決めるのは「やめる日」ではなく「その割引の役目」
先に答えをお伝えします。順番はこうです。
- その割引が①入口価格・②体験価格・③感謝の値引きのどれだったかを、1つに決める。
- 自社で見せる価格を、定価を見せて引く/最初から割引後を載せるのどちらかに決める。
- 出口を、続ける/やめる/作り替えるの3択から選ぶ。
- 伝える順番と、価格が2つ並ぶ期間の終わりを決める。
- 「通常◯◯円」と書くなら、その価格で売っていた実績があるかを確認する。
やめる日を先に決めようとすると、決まりません。日付は「誰に、何を、どう伝えるか」が決まったあとに、逆算で出てくるものだからです。逆に、割引の役目を1つに決めてしまうと、続けるか・やめるかはほぼ自動的に決まります。役目が終わっている割引は、やめる理由を探さなくてよいからです。
そしてもうひとつ。この記事では「安売りは悪い」という立場を取りません。媒体のクーポンを続ける判断も、条件を絞って残す判断も、どちらも成り立ちます。決めたいのは是非ではなく、出口です。
決まらないのは、3種類の割引を1つにまとめて考えているから
「割引をどうするか」が決まらないとき、頭の中では性質の違う3つが同じ棚に置かれています。
- 入口価格:媒体の一覧で見つけてもらうための価格。他店と横並びで比較される場所に出すための値付けです。
- 体験価格:初めての人が試しやすいようにハードルを下げる価格。相手は「まだ知らない人」です。
- 感謝の値引き:長く通ってくださる方に続けている値引き。相手は「もう知っている人」です。
この3つは、終わらせ方がまったく違います。
入口価格は、媒体を離れた時点で役目が終わります。見つけてもらうための費用だったのですから、その場所に出さないなら、価格を下げておく理由もなくなります。体験価格は、残すなら回数や条件で縛る必要があります。「初回だけ」と決めていない体験価格は、2回目以降も同じ値段で受け続けることになり、体験ではなく通常価格になります。感謝の値引きは、やめると価格の問題ではなく関係の問題になります。理由の説明と、伝える順番が要ります。
3つを混ぜたまま「割引をどうするか」を考えるから、答えが出ません。「やめたら来なくなるかもしれない」という不安が、実は③の感謝の値引きについての不安なのに、①の入口価格の判断まで止めてしまう。これが、いちばんよくある詰まり方です。
まず、いま出している割引を紙に書き出して、それぞれに①②③のどれかを1つだけ書いてください。2つ書きたくなるものがあれば、それが決まらない原因です。
「10%オフを選んでもらう」を、自社の予約に持ち込めなかった話
ここで、実際に手が止まったオーナーの話をひとつ紹介します。サロンオーナーへのヒアリングに基づき、特定できない形に匿名化しています。聞き取りやすさのために言い回しを整えていますが、内容は変えていません。
美容室のオーナーAさん(仮名)は、掲載媒体の利用を縮小して、いま来てくださっているお客様を自社の予約に移そうとしていました。Aさんの言葉です。
「既存のお客さんを(自社の予約)に誘導したいっていうのが僕の中であるんですよね」
ところが、移そうとした瞬間に止まりました。媒体側では「10%オフのクーポンを選んでから、メニューを選んでください」という見せ方をしていたからです。
「メニュー=料金は確実に入れないといけないですし、そこから10%オフにするやり方が……もともと10%オフにして記載しないといけない(のか)」
つまり、Aさんが移そうとしていた自社の予約画面では、1つのメニューに1つの価格しか置けませんでした。クーポンを価格とは別立てで持てるかどうかはツールによって異なりますが、別立てにできない場合、媒体でやっていた「定価を見せて、クーポンで引く」という二段構えを、そのままの形では持ち込めません。Aさんが本当に困っていたのは、機能の使い方ではなく、お客様に見えている流れが変わってしまうことでした。
「クーポンを選んでもらって、実際いただくお金は(割引後の額)をいただいてるんですよ。その流れを(自社側)でも作りたかった」
Aさんが扱っていたのは、1万円弱のメニューで1割ほどの割引という規模です。金額そのものは大きくありません。それでも手が止まったのは、「どちらの価格をお客様に見せるか」という選択を、これまで一度もしたことがなかったからです。媒体が二段構えを用意してくれていたので、選ぶ必要がなかったのです。
ここに、この記事の存在理由があります。媒体から自社へ移すとき、ほぼすべての店が同じ二択を突きつけられます。定価を出して会計で引くのか。最初から割引後の価格を載せるのか。この二択に気づかないまま移そうとすると、Aさんのように、作業の途中で止まります。逆に、先に決めておけば止まりません。次で、その決め方を扱います。
① 自社で見せる価格は「定価を見せて引く」か「割引後を載せる」か
どちらが正解ということはありません。次の3点で、自分の店の答えが決まります。
(1)お客様に定価を知っておいてほしいか。
将来もとの価格に戻すつもりがあるなら、定価は見せておいたほうが後が楽です。「9,000円のところ、初回8,000円」と伝えてきた相手に、いつか8,000円をやめると伝えるのは、値上げの通知ではなく「初回価格の終了」の通知になります。一方、最初から8,000円としか見せていなければ、9,000円にする日は値上げとして受け取られます。同じ金額の動きでも、先に何を見せていたかで、伝えるときの重さが変わります。
ただし、定価を見せる書き方には決まりがあります。この記事の後半で扱う景品表示法の考え方に関わる部分なので、そちらもあわせてお読みください。
(2)記録に定価が残るか。
これは見落とされやすい点です。最初から割引後の価格だけで受けていると、あとから「いくら引いたのか」がどこにも残りません。半年後に「初回割引をやめるべきか」を考えるとき、判断材料になるのは「割引をやめたら月にいくら増えるのか」という数字です。割引額が残っていないと、その数字が出せません。感覚で決めることになります。
割引をやめる判断をいつかするつもりなら、定価と割引額が別々に残る形にしておくほうが、後で困りません。
(3)歩合や原価率を、どちらの金額で計算しているか。
スタッフに歩合(売上に応じた取り分)を払っている店では、ここが実害になります。割引後の金額を基準に歩合を計算する設計だと、店の都合で出した割引のたびに、担当者の取り分が減ります。割引を出したのは店の判断なのに、負担が現場に回る形です。
原価率(売上に対する材料費の割合)も同じです。割引後の金額を分母にすると、割引を出すほど原価率が悪く見えます。数字が悪化したように見えて、原因が割引だと気づけない、ということが起きます。
どちらの金額を基準にしているかは、使っている道具や設定によって変わります。移す前に一度、確認しておいてください。なお、割引後の金額で記録すると、お客様1人あたりの平均単価である客単価も割引後の数字になります。どちらで見ているかを自分の中ではっきりさせておくと、月次の見方がぶれません。
まとめると、いつか定価に戻すつもりがあるなら「定価を見せて引く」、当面その価格で続けるつもりなら「割引後を載せる」。この分け方が、いちばん迷いません。
② 出口は「続ける・やめる・作り替える」の3択で設計する
役目を決め、見せ方を決めたら、出口です。3つしかありません。
続ける場合は、対象を絞ります。
続けると決めたなら、「誰にでも、いつでも」をやめます。絞り方は3つあります。
- 人で絞る:初回の方だけ、紹介で来られた方だけ。
- 時間で絞る:平日の昼だけ、営業開始直後の枠だけ。埋まりにくい時間に限定すると、割引が空き枠を埋める役目を持ちます。
- 回数で絞る:初回から3回目まで、など終わりを決めておきます。
絞らずに続けると、割引ではなく通常価格になります。通常価格になった割引は、やめるときに値上げとして扱われます。
やめる場合は、期限を先に切って、先に伝えます。
伝えるのは3つです。いつから・誰に・いくらになるか。この3つが揃っていない告知は、聞いた側が予定を立てられません。目安として、来店周期の1回分より長い予告期間を取ると、多くのお客様が「次の来店」で心の準備をした状態になります。2か月ごとに来られる方が中心なら、2か月以上前ということです。
なお、割引をやめて元の価格に戻す動きは、お客様から見れば実質的な値上げに近く受け取られます。改定日をまたぐご予約や、すでにお持ちの回数券・月額会員の扱いは、サロンの値上げはいつから適用する?予約済み・回数券・月額会員の線引きにまとめてあります。線引きはそちらで決めてください。
作り替える場合は、値引き以外の形にします。
金額を下げる代わりに、別の形で還元します。次回の予約を取ってくださった方への特典、まとめてお支払いいただく回数券、施術に付帯するサービス。どれも「安くする」ではなく「多く受け取ってもらう」形です。
作り替えの利点は、割引をやめたときの落差が出にくいことです。金額を戻すと差額がそのまま見えますが、形を変えると比較の軸が変わります。ただし、付帯サービスは施術時間や材料費として原価に乗ります。「値引きしていないつもりで、実は値引きより高くついていた」となることがあるので、1回あたりのコストは出しておいてください。
3択のどれを選んでも、共通することが1つあります。「なんとなく続いている割引」だけは残さないことです。始めた理由を思い出せない割引は、続けるとも決めていないし、やめるとも決めていない状態です。この状態の割引が1つでもあると、価格の全体像が説明できなくなります。
③ 同じ施術に2つの価格が並ぶ期間を、どこまで短くするか
媒体と自社を併用する間は、同じ施術に2つの価格が見える期間ができます。媒体側の表示と自社側の表示は、それぞれ別に管理することになるからです。この期間について、決めることが3つあります。
(1)揃えるのか、あえて差をつけるのか。
自社のほうを安くすると、移行は進みます。ただしこれは、媒体を離れるための一時的な誘導です。差をつけると決めるなら、自分の中で期限を切っておくことです。期限のない価格差は、そのまま定着します。
逆に揃えると決めるなら、移行の動機は価格以外で作ることになります。予約の取りやすさ、次回の予約をその場で取れること、連絡の届きやすさ。価格で釣らない移行のほうが、あとで戻すときの説明が要りません。
(2)いつ揃えるか。
媒体の掲載を止める日から逆算します。掲載を止める日に価格が揃っていれば、その日を境に「どちらで予約しても同じ」になります。揃える作業を掲載終了より後にすると、媒体経由の最後のお客様と、自社経由の最初のお客様で、価格の記憶が食い違います。
(3)誰から先に伝えるか。
順番は、来店の頻度が高い方からです。
- 毎月のように来てくださる方(直接お会いして伝えられる)
- 数か月おきの方(次のご来店時、または個別のご連絡で)
- 一度きりの方(媒体側の表示を変える時点で自然に伝わる)
頻度の高い方から伝える理由は、その方たちが最初に価格の変化に気づくからです。気づいたときに説明がまだ届いていないと、店の外で先に話題になります。順番を逆にすると、この事故が起きます。
移行そのものの段取り(顧客情報の引き継ぎ、掲載終了までの作業)は価格とは別の話なので、ホットペッパー解約前の準備リスト|顧客データの引き継ぎ手順を参照してください。この記事では価格の面だけを扱います。
「通常◯◯円」と書けるのは、その価格で売っていた実績があるとき
ここは、割引の出口設計でいちばん見落とされる部分です。外部の一次情報にあたって確認しました。
消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(平成12年6月30日公正取引委員会、最終改定 平成28年4月1日消費者庁。2026年8月11日参照)は、「通常◯◯円 → 今だけ◯◯円」のように、高いほうの価格を併記する表示(二重価格表示)の考え方を示しています。同ガイドラインは、過去の販売価格を比較の相手に使う場合、その価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」でないときは、いつの時点でどのくらいの期間その価格で販売していたかを正確に表示しない限り、不当表示に該当するおそれがあるとしています。
「最近相当期間にわたって販売されていた価格」かどうかの目安として、同ガイドラインは次の考え方を示しています。
- セールを始める時点からさかのぼる8週間で見る(その商品を売っていた期間が8週間に満たない場合は、その期間で見る)
- その期間のうち、その価格で売っていた期間が過半を占めていること
- その価格での販売期間が通算2週間以上あること
- その価格で売った最後の日から2週間以上経っていないこと
サロンの実務に翻訳すると、こうなります。
ケース1:ずっと割引価格でしか受けていないメニューに「通常9,000円」と付ける。これは危ないほうです。9,000円で売っていた実績がないなら、その9,000円は比較の相手として使えません。定価を掲げたいなら、先に定価で売る期間を作るところからです。
ケース2:新しいメニューを、最初から「通常◯◯円→初回◯◯円」で出す。同ガイドラインは、セールを決めたあとに販売を始めた商品について、セール前の価格は実績作りとみられることから、その期間を正確に表示しても不当表示に該当するおそれがある、としています。新メニューをいきなり二重価格で出すのは、避けるほうが無難です。
ケース3:もとの価格に戻す。これは二重価格表示の問題ではありません。ただし、戻したあとに「以前は◯◯円でした」と割引の記憶を利用する書き方をすると、(1)の話に戻ります。
ケース4:媒体では二重価格、自社では割引後だけ、と分けている。同ガイドラインは、価格表示が行われる媒体を問わず適用される考え方を示しています。掲載媒体の表示だから対象外、ということにはなりません。
なお、実際に不当表示に当たるかどうかは個別の事案ごとに判断されます。ここに挙げたのは考え方の枠であって、自店の表示が適法かどうかの結論ではありません。判断に迷う表示をする前に、消費者庁のガイドライン本文を確認するか、専門家にご相談ください。
覚えておきたいのはひとつです。割引をやめるとき、「もとの価格に戻すだけ」のつもりでも、見せ方によっては新しい表示を作ることになります。戻すという行為そのものは自由ですが、その伝え方には枠があります。
割引は価格ではなく、集客コストです
ここでひとつ、私たちが現場を見ていて思うことを書きます。
割引は、値付けの一部ではありません。お客様に来ていただくために払っている費用です。媒体に払う掲載料と、同じ棚に置くべきものだと考えています。
この見方をすると、判断が1つ変わります。媒体をやめるとき、多くの店が「掲載料が浮く」と考えます。ところが、媒体でやっていた割引をそのまま自社に持ち込むと、掲載料は消えても割引は残ります。コストの置き場所が、媒体から自店の値引きに移っただけです。手元に残るお金は、思ったほど増えません。
やめる判断をするときは、掲載料と割引額を足した金額で見てください。月の掲載料と、その媒体経由のお客様に出した割引額の合計。これが、その集客経路にかけている本当の費用です。片方だけを見ていると、「媒体をやめたのに楽にならない」という結果になります。
そしてこの見方には、逆向きの含みもあります。集客コストとして意味があるなら、割引を続ける判断も正しいということです。やめるべきかどうかではなく、いくら払っているかを知ったうえで選べているか。そこだけが問題です。
割引をやめる前に決める5つ
ここまでの内容を、紙に書き写せる形にまとめます。
〈割引をやめる前に決める5つ〉
- その割引は、入口価格・体験価格・感謝の値引きのどれか。1つだけ選べているか。2つ書きたくなるなら、まだ分解できていません。
- 自社で見せるのは、定価か、割引後の価格か。いつか定価に戻すつもりなら定価を見せる側、当面その価格で続けるなら割引後を載せる側です。
- 記録に、定価と割引額が別々に残るか。残らないなら、半年後に「やめたらいくら増えるか」が出せません。歩合と原価率をどちらの金額で計算しているかも、あわせて確認します。
- 出口は、続ける・やめる・作り替えるのどれか。続けるなら人・時間・回数のどれで絞るか。やめるなら、いつから・誰に・いくらになるかを3つセットで用意します。
- 「通常◯◯円」と書くなら、その価格で売っていた実績があるか。実績がないなら、書き方を変えるか、先に定価で売る期間を作ります。
5つのうち2つ以上が空白なら、日付を決める段階にはまだ来ていません。1に戻ってください。
お客様への案内文の型
告知の文面は、短いほうが伝わります。2つの型を置いておきます。金額と日付を入れ替えてお使いください。
型A:割引を終了する場合
いつもご来店いただきありがとうございます。
かねてよりご案内しておりました初回・ご紹介限定の割引価格につきまして、◯月◯日のご来店分をもって終了いたします。
◯月◯日以降は、カット◯,◯◯◯円(税込)の通常価格でのご案内となります。
◯月◯日までにご予約いただいたご来店分は、これまでの価格で承ります。
引き続き、ゆっくりお過ごしいただける時間をご用意してお待ちしております。
型B:条件付きで残す場合
いつもご来店いただきありがとうございます。
◯月◯日より、割引価格のご案内を「平日◯時までのご予約」に限らせていただきます。
平日◯時までのご予約:カット◯,◯◯◯円(税込)
上記以外の時間帯:カット◯,◯◯◯円(税込)
ご予約の際は、ご希望のお時間をお知らせください。これまで通りのご案内ができるよう、平日のお時間もご検討いただけますと幸いです。
型Aで大事なのは、4行目です。「いつまでに予約すれば、これまでの価格か」を書いておくと、問い合わせがほとんど来なくなります。型Bで大事なのは、2つの価格を並べて書くことです。片方だけ書くと、「値上げされた」という受け取り方になります。
やってはいけない見せ方と、記録の落とし穴
出口設計でつまずきやすい点を挙げます。
- 売っていた実績のない価格を「通常価格」として掲げる。前述のとおりです。定価を見せたいなら、先に定価で売る期間を作ります。
- 新メニューをいきなり二重価格で出す。セールを決めたあとに販売を始めた場合、セール前の価格は実績作りとみられます。
- やめる日を決めてから、伝える相手の順番を考える。順番が逆です。頻度の高い方から伝わる段取りを組んでから、日を決めます。
- 媒体側が負担する割引やポイントを、自店の値引きとして記録する。お客様が媒体のポイントを使われた分は、後日その運営元から入金されるので、店の売上は減っていません。これを値引きとして記録すると、帳簿の上だけ売上が減ります。手数料や入金日を含めた記録の分け方は、サロンの支払い方法を現金・カード別に管理する|手数料と入金日の見方にまとめてあります。
- 割引額を残さずに、割引後の金額だけで記録する。やめる判断をする段になって、材料がない状態になります。
- 歩合を割引後の金額で計算したまま放置する。店の判断で出した割引の負担が、担当者に回ります。移す前に基準を確認します。
- 「常連さんだから」で個別に引く。その場は円満ですが、記録に残らず、他の方との差が説明できなくなります。残すなら条件として明文化します。
- 一度に全部を変える。価格・見せ方・予約の経路を同時に変えると、お客様が何に戸惑っているのか分からなくなります。経路を移す時期と、価格を変える時期は、ずらすほうが安全です。
- 値引きの会計処理を自己判断で決める。売上値引として処理するか、費用として処理するかは、内容と契約によって扱いが変わります。仕訳の判断は税理士にご確認ください。
業態別の差分メモ
同じ出口設計でも、業態によって重心が変わります。
- 美容室:メニューの数が多く、割引が「クーポン」という単位で束ねられていることが多い業態です。移すときは、割引を1つずつ棚卸しするより、メニューの数だけ価格を決め直すほうが早く終わります。指名料や追加のオプション料金が絡む場合は、割引の対象範囲(施術だけか、指名料も含むか)をはっきりさせておきます。
- まつげエクステ・ネイル:来店の周期が短く、同じ方が繰り返し来られます。感謝の値引き(③)の比重が大きくなりやすい業態です。やめるより、回数券や次回予約の特典に作り替えるほうが噛み合うことが多い形です。
- エステ・脱毛:コース契約と単発の価格が併存します。単発の初回割引をやめると、コースとの価格差が変わるので、コース料金の見え方まで一緒に確認します。前払いを伴う契約は、途中で価格を変えたときの扱いを契約書の側でも確認してください。
- 自費の整体・鍼灸など:初回の施術料を下げて、2回目以降で通常料金にする形が広く使われています。この形は「体験価格」(②)にあたるので、何回目までが初回価格かを最初に明記するところが要点です。なお、施術の内容や効果に関する表現は、2025年のあはき柔整の広告ガイドライン改正でホームページやSNS、地図サービスの表示まで規制の対象になっています。価格の告知文に施術の効果を書き添えるのは避け、料金と条件だけを書くようにしてください。
まとめ
サロンの初回割引をやめるタイミングは、日付から決めると決まりません。順番を入れ替えます。
まず、その割引が入口価格・体験価格・感謝の値引きのどれだったかを1つに決めます。3つは終わらせ方が違うので、混ぜたままでは判断できません。
次に、自社で見せる価格を、定価を見せて引くか、最初から割引後を載せるかで選びます。判断材料は3つです。お客様に定価を知っておいてほしいか、記録に定価と割引額が別々に残るか、歩合と原価率をどちらの金額で計算しているか。
出口は、続ける・やめる・作り替えるの3択です。続けるなら人・時間・回数のどれかで絞ります。やめるなら、いつから・誰に・いくらになるかを先に伝えます。作り替えるなら、付帯するコストを1回あたりで出しておきます。
移行の期間は、価格を揃えるのか差をつけるのか、いつ揃えるのか、誰から伝えるのかを決めます。伝えるのは、来店の頻度が高い方からです。
そして、「通常◯◯円」と書けるのは、その価格で実際に売っていたときだけです。もとの価格に戻すつもりでも、見せ方を誤ると新しい表示を作ることになります。
最後にもうひとつ。割引は価格ではなく、集客にかけている費用です。掲載料と割引額を足した数字で見ると、続けるか・やめるかの判断が、感覚ではなく金額で語れるようになります。
決めた価格の見せ方が、記録の側にも残るか
決めた価格の見せ方は、記録の側にも残るかどうかで、後の手間が変わります。SALONA(サローナ)は、お会計で定価を入力してから割引を適用する形なので、割引後の金額だけでなく「元がいくらで、いくら引いたか」が残ります。割引の理由も短いメモとして添えられ、売上の一覧やレポート、領収書の記載にも反映されます。割引をやめるか続けるかを判断する段になったとき、感覚ではなく記録で振り返れる状態にしておくための土台です。
よくある質問(FAQ)
Q. 初回割引をやめると、お客様は離れてしまいますか。
A. 離れる方が出るかどうかは、その割引がどの役目だったかで変わります。入口価格として使っていた割引は、媒体を離れた時点で役目が終わっているので、やめても影響が出にくい部類です。一方、長く通ってくださっている方に続けてきた値引きをやめる場合は、価格ではなく関係の問題になります。この場合は、来店周期の1回分より長い予告期間を取り、いつから・誰に・いくらになるかを3つセットで伝えてください。それでも不安が残るなら、いきなりやめずに、対象を絞って残す(平日の昼だけ、初回から3回目まで、など)か、次回予約の特典や回数券に作り替える形から試すほうが、落差が出にくくなります。
Q. もとの価格に戻すのは、値上げになりますか。
A. お客様から見れば、支払う金額が上がるので、実質的には値上げに近い受け取られ方をします。ただし、「割引の終了」として伝えるか「値上げ」として伝えるかで、必要な準備が変わります。終了として伝えられるのは、始めるときに期間や条件を示していた場合です。何も示さずに続けてきた割引は、実質的に通常価格になっているので、値上げの段取りで進めるほうが無難です。改定日をまたぐご予約や、すでにお持ちの回数券・月額会員をどう扱うかの線引きは、サロンの値上げはいつから適用する?予約済み・回数券・月額会員の線引きにまとめてあります。
Q. 掲載媒体と自社の予約で価格が違うのは、問題になりませんか。
A. 同じ施術に異なる価格を出すこと自体が、ただちに問題になるわけではありません。注意が要るのは、価格が適用される条件を示さずに安いほうの価格だけを見せる場合です。消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」は、表示された販売価格が適用される顧客が限定されているのに、その条件を明示せず価格だけを表示することを、不当表示に該当するおそれのある表示として挙げています(2026年8月11日参照)。「自社の予約限定」「平日◯時までのご予約に限る」といった条件を、価格と同じ場所に書いておいてください。あわせて、価格差をつける期間の終わりを自分の中で決めておくと、差が定着しません。
運営: 株式会社art crat./SALONA編集部
公開日: 2026-08-11 最終更新: 2026-08-11
本記事のお客様の声は、SALONA利用サロンへのヒアリングに基づき、特定できない形に匿名化して掲載しています(聞き取りやすさのために言い回しを整えています)。
参照: 消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(平成12年6月30日公正取引委員会、改定 平成28年4月1日消費者庁)/二重価格表示|消費者庁(2026年8月11日参照)
注記: 価格表示が景品表示法上問題となるかどうかは、個別の事案ごとに判断されます。本記事は考え方の枠を整理したもので、自店の表示についての結論を示すものではありません。値引きの会計処理・仕訳の扱いを含め、判断に迷う場合は専門家(税理士・弁護士など)にご相談ください。