カルテ・問診票・同意書

サロンの施術写真はSNS掲載とカルテ記録で同意を分ける|取り方と文例

26分で読める

サロンの施術写真をSNSに載せる同意は、カルテ記録と分けて取ります

施術写真を撮って自店のSNSに載せたい。同時に、次回の参考としてカルテにも残したい。同じ1枚の写真なのに、この2つは別の話です。結論から書くと、同意は「記録として残す」と「外に出す」の2つに分けて取ります。1つにまとめると、掲載を断られたときにカルテの記録まで残らなくなるからです。

この記事でわかること

  • 同じ写真でも「記録用」と「掲載用」で同意を分ける理由と、どちらを必須にするかの決め方
  • 同意として成立させるために文面へ入れる6項目と、そのまま使える文例
  • 断られたとき、「やっぱり消してほしい」と言われたときに、その場で迷わないための手順
この記事の立場について
この記事は、サロン向けの予約・顧客管理システム SALONA(サローナ) を提供する 株式会社art crat. が運営しています。本文で扱うのは、紙の同意書1枚とチェック欄2つでも実行できる範囲の話です。なお、肖像権や個人情報の取り扱いについての最終的な法的判断はこの記事ではできません。記載は2026年8月時点の公的資料に基づくもので、判断に迷う場合や、ご自身の店舗の事情に当てはめて確認したい場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

結論:同意は「記録用」と「掲載用」の2問に分ける

先に答えを書きます。施術写真の同意は、次の2問に分けます。

1問目(記録用):カルテに残す写真を撮ることへの同意。次回の施術のために、店の中だけで見る前提のものです。施術を受けるうえでの前提として、必須寄りに置きます。

2問目(掲載用):その写真をSNSなどに出すことへの同意。こちらは任意にします。そして、断っても施術内容・料金・予約に何ら不利益がないことを、文面にはっきり書きます。

分ける理由は1つです。まとめて1問にすると、掲載を断られた瞬間に、記録用の写真まで撮れなくなるからです。お客様が断りたかったのは「外に出ること」であって、「担当者が次回の参考に見返すこと」ではないかもしれません。にもかかわらず、1問にした側の都合で、両方まとめて失うことになります。

作業の順番はこうです。

  1. 自店で撮る写真が、どの目的に使われるかを書き出す。
  2. その目的を「店の中で完結するもの」と「外に出るもの」に仕分ける。
  3. 前者を必須寄り、後者を任意にして、同意の文面を2問に分ける。
  4. 文面に入れる項目(後述の6つ)を埋める。
  5. 断られたとき、あとから撤回されたときの扱いを、先に決めて文面と揃えておく。

「どう書けば揉めないか」から入ると手が止まります。「この写真はどこまで行くのか」から入ると、書く内容は自然に決まります。

「SNSに載せていいですか」の一括同意が、カルテまで止めてしまう

写真の同意でつまずくお店を見ていると、原因はだいたい同じところにあります。同意を1問しか用意していないことです。

よくあるのは、こういう1文です。

施術のお写真を撮影し、当店のSNS等に掲載させていただく場合がございます。

一見すると足りているように見えます。実際には、この1文は2つの問題を抱えています。

1つ目は、断られたときの受け皿がないことです。お客様が「SNSはちょっと」と言った時点で、この同意は不成立になります。撮影そのものが止まるので、カルテに残す写真も撮れません。次に来店されたとき、前回どう仕上げたかを確かめる手がかりが消えます。

2つ目は、目的が1つにまとまってしまっていることです。個人情報保護委員会は、利用目的について、本人が「一般的かつ合理的に予測・想定できる程度」まで特定するよう求めています(個人情報保護委員会 ガイドラインQ&A Q1-2-1・2026年8月4日確認)。「SNS等に掲載する場合がある」だけでは、店の中で記録として持ち続けることまで読み取れるとは限りません。逆に「記録のため」とだけ書いた写真を、あとから広告に使うのも筋が通りません。

つまり、1問にまとめる書き方は、断られたときにも、断られなかったときにも、うまく働きません。性質の違う2つの利用を1つの問いに押し込んでいるためです。

もうひとつ、現場でよく起きているのが撮り忘れです。施術に入ると手が離せなくなり、仕上がりを見送って、そのまま会計になる。忙しい日ほど起きます。この2つ——「断られると記録も残らない」と「そもそも撮り忘れる」——を同時に解くのが、同意を分けたうえで来店前に取っておく段取りです。

まず、同じ1枚の写真を目的で2つに書き分ける

最初にやるのは、文面を書くことではありません。自店が撮っている写真の行き先を、全部書き出すことです。

紙に2列だけ引きます。

店の中で完結する使い方外に出る使い方
次回の施術のためにカルテへ添える自店のSNSアカウントに投稿する
前回との違いを本人に見せながら説明する店のホームページやブログに載せる
担当者が変わるときに引き継ぐメニュー表・店内の掲示物に使う
(複数名で運営する場合)技術の共有に使う紙のチラシ・広告に使う
外部の媒体や取引先に提供する

書き出してみると、多くのお店で左の列のほうが件数が多いことに気づきます。毎回の施術で使うのは左側で、右側は「載せられる仕上がりになったときだけ」だからです。

ここで注意したいのが、右列の下に行くほど、お客様にとっての意味が変わることです。自店のSNSに載ることと、紙の広告に使われることと、外部に渡ることは、同じ「掲載」でも受け取られ方が違います。「SNSに載せます」の同意を根拠に、あとから広告や外部提供まで広げるのは避けます。右列に複数の行き先があるなら、どこまでを含むのかを文面に書くところまでが仕分けです。

なお、顔が写っている写真や、本人が特定できる形の写真は、個人情報として扱う前提で考えます。個人情報保護委員会は、カメラで撮影する場合について「特定の個人を識別することができる画像を取得する場合、個人情報を取り扱うことになる」としたうえで、利用目的をできる限り特定し、その範囲内で利用すること、利用目的を本人に通知または公表することを求めています(個人情報保護委員会 ガイドラインQ&A Q1-13・2026年8月4日確認)。目的を先に決めておく作業は、書類を整えるための儀式ではなく、法律が求めている出発点そのものということになります。

どちらを必須にし、どちらを任意にするか

仕分けが済んだら、2問の重みを決めます。おすすめは次の形です。

記録用は必須寄りにします。カルテは施術を続けるための土台なので、写真もその一部として扱います。ただし「必須」と書くだけでは足りません。何のために、どこまで使うのかを文面に書いて初めて、必須にする理由が伝わります。

掲載用は任意にします。そして任意を任意として成立させるために、次の2つを文面に書きます。

  • 掲載を承諾しなくても、施術の内容・料金・予約の取りやすさは一切変わらないこと
  • あとから取り消せること、その申し出先

この2つが書かれていない「任意」は、実質的に任意になりません。目の前の担当者に頼まれて断るのは、お客様にとって簡単なことではないからです。

なぜ記録用を必須、掲載用を任意にするのか

ここは、ひとりサロンでとくに差が出るところなので、少し踏み込んで書きます。

同意の重みを分けるいちばんの理由は、お客様が断る余地を残しておくことが、結果として店を守るからです。

ひとりサロンでは、担当者とお客様の距離が近くなります。指名で来ていただいている関係なら、なおさらです。この距離の近さは強みですが、写真の話になると裏目に出ます。「載せてもいいですか」と対面で聞かれて、はっきり断れる方は多くありません。断らなかったからといって、納得しているとは限らないのです。

そのまま投稿すると、どうなるか。多くの場合は何も起きません。ただ、何も起きなかったことと、お客様が気にしていないことは別です。数か月後に「あれ、消してもらえますか」と言われることがあります。そのとき困るのは、そもそも同意が形だけだったという自覚が店の側にあると、対応の基準を持てないことです。

だから、断れる形にしておきます。「断っても何も変わりません」と先に書いてしまうほうが、承諾していただいたときの一枚が強くなる。気を遣って言えなかった承諾ではなく、選んだうえでの承諾になるからです。そして記録用のほうは、掲載とは切り離して確保できます。取りこぼすものが減ります。

もうひとつ。必須にできるのは、必須にする理由を説明できる範囲だけです。記録用の写真がカルテの一部として必要だという説明は、施術を受ける側にも理解しやすい話です。一方で、掲載は店の宣伝であって、お客様の施術のためではありません。ここを必須にすると、説明が成り立たなくなります。線を引く場所は、「店の都合か、お客様の施術のためか」で決まります。

カルテそのものの残し方はサロンの手書きカルテを電子化する方法|人型図・スケッチの残し方にまとめてあります。写真を含めてどこまで記録に残すかを考えるときは、あわせて読んでみてください。

いつ取るか——撮る直前は、いちばん取りにくい

同意を取るタイミングは、来店前か、受付の段階にします。理由は2つあります。

1つ目は、撮る直前が最も断りにくいからです。仕上がった直後にカメラを構えて「載せてもいいですか」と聞かれる状況で、断るには相応の意思が要ります。この形で得た承諾は、あとから撤回されやすくなります。

2つ目は、撮り忘れを防げるからです。施術に入ると、写真は後回しになります。事前に同意が揃っていれば、「撮っていい人かどうか」を思い出す手間がなくなり、仕上がりの確認と同じ流れで撮れます。

段取りとしては、こうなります。

  1. 予約が確定したタイミングで、書面(紙・タブレット・スマートフォンの画面のいずれでも構いません)を1回で渡す。
  2. その中に、問診や施術に関する確認事項と一緒に、写真の2問を入れる。
  3. 来店時に、承諾いただけた範囲を担当者が確認できる状態にしておく。
  4. 撮影のときは改めて一言だけ添える。「先ほどご承諾いただいたお写真、撮らせていただきますね」で足ります。

4を省かないのがコツです。書面で取っていても、その場で一言添えるだけで、お客様の記憶と実際の撮影が結びつきます。あとで「そんな話は聞いていない」になりにくくなります。

書面を1回にまとめる利点は、渡す回数が減ることだけではありません。お客様が落ち着いて読める時間に読めることのほうが大きい。受付でペンを渡されて目の前で書くのと、移動中に自分の端末で読むのとでは、内容の入り方が変わります。

同意書を当日その場で受け取る運用そのものについてはまつげの同意書テンプレート無料|当日その場でタブレット署名する方法で扱っています。あちらは施術に伴うリスクの説明に対する同意、この記事は写真の肖像権と掲載範囲についての同意です。目的が違うので、同じ書類の中に置く場合でも、項目は分けておきます。

同意として成立させるために確認する6項目

ここがこの記事の実務の中心です。文面に入れる項目を6つに整理しました。表の右列は、埋めるときに迷いやすいところです。

#項目決めるときの目安
目的「記録のため」「当店の宣伝のため」のように、お客様が読んで用途を想像できる言葉で書きます。「業務のため」では特定したことになりません
写る範囲顔が入るのか、施術部位のみか、後ろ姿だけか。「顔なしなら可」という方は少なくないので、選べる形にすると承諾率が上がります
出す範囲自店のSNSアカウントだけか、ホームページ・店内掲示・紙媒体・外部への提供まで含むか。含むものだけを書き、含まないものは書きません
保存と掲載の期間記録用は「カルテの保存期間に準じる」、掲載用は「削除のお申し出があるまで」などと書きます。期限を決めるなら守れる長さにします
撤回の申し出先と方法誰に、どうやって言えばよいか。店の連絡先を具体的に書きます。ここが空欄だと、任意にした意味が薄くなります
未成年の場合の保護者の関与保護者の署名欄を用意し、どの年齢から必要かを店として決めておきます(次の項で詳しく扱います)

②を選択制にできると、運用がだいぶ楽になります。「顔あり・顔なし・掲載不可」の3択にしておくと、断りたいわけではないけれど顔は避けたい、という方の受け皿ができます。掲載そのものより、顔が写ることに抵抗を感じる方は少なくありません。

③は、増やしすぎないことが肝心です。「当店が適当と認める媒体」のような包括的な書き方は、読む側からすると行き先が分かりません。いま実際に使うものだけを書き、増えたら取り直すほうが、結果として揉めにくくなります。

そのまま使える文例

書き出しに使える文例です。自店の言葉に置き換えて使ってください。ご自身の店舗の事情や地域のルールに合わせて調整が必要になる場合があります。

1問目:記録用(必須寄り)

【お写真の撮影について(施術記録として)】
次回以降の施術の参考とするため、施術の前後にお写真を撮影し、お客様のカルテに保存させていただきます。
保存したお写真は、当店内での施術記録としてのみ使用し、外部への公開・提供は行いません。担当者の変更がある場合は、引き継ぎのため店内で共有することがあります。
保存期間はカルテの保存期間に準じます。削除をご希望の場合は、下記の連絡先までお申し付けください。
☐ 上記に同意します
(ご記入日:  年  月  日/お名前:        )

2問目:掲載用(任意)

【お写真の掲載について(任意)】
上記のお写真を、当店の宣伝のためにSNS(Instagram・当店ホームページ)へ掲載させていただく場合がございます。こちらは任意です。ご承諾いただかない場合でも、施術内容・料金・ご予約に一切の違いはございません。
ご希望の範囲をお選びください。
☐ 顔を含む写真の掲載に同意します
☐ 顔が写らない範囲(施術部位・後ろ姿など)の掲載のみ同意します
☐ 掲載は希望しません
掲載後であっても、お申し出をいただければ削除いたします。ただし、他の方が転載・保存された画像や、すでに配布した印刷物については、回収できない場合がございます。
お申し出先:(店名・電話番号・メールアドレス・公式アカウント名など)
(ご記入日:  年  月  日/お名前:        )

未成年のお客様の場合に足す一文

18歳未満のお客様につきましては、保護者の方のご確認とご署名をお願いしております。
(保護者お名前:        /続柄:    )

年齢の線引きは、店として決めておきます。個人情報保護委員会は、同意によって生じる結果を判断できる能力があるかどうかについて、「法定代理人等から同意を得る必要がある子どもの具体的な年齢は、対象となる個人情報の項目や事業の性質等によって、個別具体的に判断されるべきですが、一般的には12歳から15歳までの年齢以下の子どもについて、法定代理人等から同意を得る必要があると考えられます」としています(個人情報保護委員会 ガイドラインQ&A Q1-62・2026年8月4日確認)。

これは個人情報の取り扱い一般についての目安です。写真の掲載は、いったん外に出ると取り戻しにくい性質があるため、この目安より高めの年齢——18歳未満は保護者の確認を得る、といった線——を店の運用として置いているお店もあります。どこに引くにしても、担当者によって判断が変わらないよう、数字で決めておくことが大切です。

「やっぱり消してほしい」と言われたときの手順を先に決める

同意を取る作業と同じくらい大事なのが、撤回されたときにどうするかを、承諾いただく前に決めておくことです。ここが決まっていないと、言われたその場で対応がぶれます。

写真は、消せるものと消しにくいものに分かれます。

自店で消せるもの——自店のSNSアカウントの投稿、ホームページに置いた画像、店内の掲示物、カルテに保存した写真。ここは、お申し出を受けたら対応すると約束できます。

消しにくいもの——他の方が転載・保存した画像、すでに配布した印刷物、外部媒体に提供済みの画像、検索結果に残った表示。ここは、こちらの手で完全に取り戻せるとは限りません。

対応の基準は、この線引きどおりに文面へ書きます。約束できる範囲だけを約束するのが、いちばん揉めません。「すべて削除します」と書いておいて実行できないほうが、はじめから「回収できない場合があります」と書いておくより問題が大きくなります。

そのうえで、店の中では次の3つを決めておきます。

  1. 申し出の受け口を1つにする。 電話・公式アカウント・メールのどれで来ても、対応する人が同じになるようにします。
  2. 対応期限を決める。 「お申し出から◯営業日以内に削除」と自店の基準を持っておくと、その場で答えられます。
  3. 記録を残す。 いつ、どのお客様から、どの範囲の撤回があったかをカルテに書いておきます。次回の来店時に、同じ写真をうっかり使ってしまう事故を防げます。

3を軽く見ないでください。撤回は口頭で来ることが多く、そのときは覚えていても、数か月後には忘れます。同意の状態を、記録の側にも書き戻しておくのが実務の要点です。

「SNSも投稿したいし、カルテとしても残したい」——あるオーナーの話

ここからは、実際にサロンのオーナーから伺った話です。ヒアリングに基づき、特定できない形に匿名化して掲載します(書き起こしの変換誤りと言い淀みのみ整えています)。

ヘアサロンのオーナーAさん(仮名)は、来店前にお客様へ渡す同意書を作っている最中でした。写真についての文面を書こうとして、こう言いました。

いや、それSNSもやっぱ投稿したいですし

そのあと、写真の使い道をもうひとつ挙げています。

カルテとしてそうそう。両方、両方したいんですよ。同じ写真を

記録用の写真をどのくらい撮りたいか、という話の流れで出てきたAさんの一言が、この記事の出発点になりました。

ま、ほぼ取りたいっすよね。やっぱ忘れちゃうことが多いんで

「忘れちゃうことが多い」。ここに現場の実感が出ています。前回どこをどう仕上げたか、どの薬剤をどう使ったか。次の来店までの数か月で、記憶は薄れます。だから記録は、できるだけ全員分ほしい。

一方で、SNS掲載についてはこう言っています。

SNSは2位で、一応カルテとして使いたいんで

同じ1枚の写真に、優先順位が2つあったということです。カルテが先で、SNSは2番目。この差が、そのまま同意の重みの差になります。

このやり取りの中で、同意を1問にせず2問に分けるという結論が固まりました。記録用と掲載用を別々の問いにする形です。そして記録用の扱いについて、Aさんはこう答えています。

マスト(=必須)のほうがいいです

ここまでのAさんの言葉を並べると、判断の道筋が見えてきます。「両方したい」「ほぼ取りたい」「SNSは2番目」「記録用は必須で」。この4つが揃うと、同意を1問にまとめる選択肢は消えます。1問にすれば、SNSを断られた瞬間に、いちばんほしかった記録用まで失うことになるからです。

なお、Aさんはこのやり取りの中で、2問を来店前に読んで署名してもらう形にすると決めました。撮る直前に聞くのではなく、予約が確定した段階で渡す。「忘れちゃう」への対処が、文面の中身ではなく渡すタイミングの側にあったというのが、このやり取りから得られたもうひとつの結論でした。

肖像権と個人情報、文面を書くときに知っておく3つのこと

法的な判断はこの記事ではできませんが、文面を書くときに知っておくと迷いが減る点を3つだけ整理します。いずれも公的な資料に基づくものです。

1. 肖像権という名前の法律は、単独では存在しません。

「肖像権法」という法律があるわけではなく、判例の積み重ねの中で認められてきた権利です。最高裁判所は、氏名・肖像等について「個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を有すると解される」と述べています(最高裁第一小法廷 平成24年2月2日判決・平成21年(受)第2056号/肖像については最高裁平成17年11月10日判決を引用・2026年8月4日確認)。

実務に落とすと、こうなります。条文の要件を満たせばよい、という種類の話ではないということです。だから「どこまで書けば法的にセーフか」を探すより、お客様が読んで納得できる文面かどうかで判断するほうが、結果として安全側に寄ります。

2. 写真は、個人情報として扱う前提で考えます。

個人情報保護委員会は、カメラで撮影する場合について「特定の個人を識別することができる画像を取得する場合、個人情報を取り扱うことになる」としています。そのうえで、利用目的をできる限り特定し、その範囲内で利用すること、利用目的を本人に通知または公表することを求めています(個人情報保護委員会 ガイドラインQ&A Q1-13・2026年8月4日確認)。

ここから導かれるのが、目的を先に書き出す作業の重要性です。「記録のため」と伝えて集めた写真を、あとから宣伝に使うのは、伝えた目的の外に出ることになります。だから最初から2問に分けておくのが、いちばん手間が少ない方法になります。

3. 健康状態がうかがえる情報は、扱いがより慎重になります。

個人情報保護法には「要配慮個人情報」という区分があり、病歴などが含まれます。取得には原則として本人の同意が必要とされています(個人情報保護委員会 FAQ・2026年8月4日確認)。

施術部位の写真がそれ自体でこの区分にあたるとは限りません。ただ、体の状態が読み取れる写真は、お客様の側の抵抗が大きくなりやすい領域です。法律上の区分に該当するかどうかを判断する前に、掲載のハードルを一段上げておくのが現実的な線引きになります。

写真の同意でよくある失敗

  • 口頭だけで済ませる。 「載せてもいいですか」「いいですよ」で終わらせると、承諾いただいた範囲が残りません。顔まで含むのか、SNSだけなのか、期間はどうか。あとで確認できない状態になります。記録が残らないと、担当者が変わったときにも引き継げません。
  • 「SNSに載せます」の一括同意にして、記録用まで巻き込む。 この記事の出発点です。掲載を断られると、いちばん必要な記録まで残らなくなります。
  • 未成年のお客様を、本人の同意だけで処理する。 保護者の確認をどの年齢から求めるかを、店として先に決めておきます。担当者ごとに判断が違う状態がいちばん危うい形です。
  • 背景に他のお客様やスタッフが写り込む。 同意をいただいたのは目の前のお客様であって、鏡に映った隣の席の方ではありません。撮る前に背景を一度見る、投稿前に隅まで確認する。この2つで大半は防げます。
  • 撮影者が変わると運用が崩れる。 ひとりで回している間は問題が起きにくく、スタッフやアシスタントが増えたときに表面化します。「誰が撮っても同じ範囲になる」ように、承諾いただいた範囲を記録の側から確認できる形にしておきます。
  • 撤回を受けたのに、記録に書き戻さない。 削除して終わりにすると、数か月後に同じ写真を別の投稿で使ってしまうことがあります。撤回もカルテに残します。
  • 「掲載してもいい人」の判断を記憶に頼る。 顧客数が増えるほど、どこかで行き違いが出ます。承諾いただいた範囲は、写真そのものではなくお客様の情報の側に紐づけて残しておきます。
  • 同意を取り直さないまま、使い道だけ増やす。 SNSだけの想定で始めたのに、チラシや外部媒体にも使うようになる。行き先が増えたら、取り直します。

業態別に、掲載のハードルが変わる

同じ「施術写真」でも、業態によって重さが変わります。

美容室・ネイル・まつげ … 仕上がりの見せ方が集客に直結するため、掲載の需要がいちばん高い領域です。ビフォーアフターの形で並べる投稿も多く、その分「どこまで写るか」の許可の取り方が効いてきます。②の「写る範囲」を選べる形にしておく価値が大きい業態です。顔なしでも成立する構図——手元、後ろ姿、目元のみ——を先に持っておくと、掲載不可の方が減ります。なお、仕上がりには個人差があるため、写真だけで結果を約束するような書き方は避けます。

エステ・ボディケア・フェイシャル … 体の状態が読み取れる写真になりやすい領域です。前述のとおり、掲載のハードルは一段上げておくのが現実的です。加えて、施術前後(ビフォーアフター)の写真を並べる見せ方は、施術の成果を示すものと受け取られる可能性があります。感じ方や仕上がりには個人差がある旨を添え、結果を約束する表現にしないことを、掲載の運用ルールとして決めておきます。

整体・整骨院・鍼灸などの治療院 … ここはさらに慎重に扱います。あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律や柔道整復師法に基づく広告の考え方は近年整理が進んでおり、ウェブサイトやSNS上の表示も対象になり得ます。施術前後(ビフォーアフター)の写真を並べる見せ方は、それ自体が施術の成果を示すものと受け取られる可能性があるため、掲載の可否以前に、その見せ方を採らない判断をしておくのが安全側です。掲載する場合も、症状の変化を示唆する説明を添えないようにします。判断に迷う場合は、所管の保健所や業界団体、専門家に確認してください。受付で書類を回す段取りそのものは整骨院・整体院のweb問診票をiPadで運用する|受付を短くする手順にまとめてあります。

まとめ

施術写真の同意は、次の順で決めていきます。

  1. 自店の写真の行き先を、全部書き出す。 店の中で完結するものと、外に出るものに仕分けます。
  2. 同意を2問に分ける。 記録用は必須寄り、掲載用は任意。任意には「断っても施術・料金・予約に不利益がない」と明記します。
  3. 来店前か受付の段階で、書面で一度に取る。 撮る直前は、お客様がいちばん断りにくく、店がいちばん忘れやすいタイミングです。
  4. 6項目を文面に落とす。 ①目的 ②写る範囲 ③出す範囲 ④保存と掲載の期間 ⑤撤回の申し出先と方法 ⑥未成年の場合の保護者の関与。
  5. 撤回されたときの手順を、承諾いただく前に決める。 自店で消せるものと消しにくいものを分け、約束できる範囲だけを文面に書きます。
  6. 撤回を受けたら、記録の側にも書き戻す。 削除して終わりにしません。

この記事のいちばんの要点は、2の分け方です。同意を1問にまとめると、掲載を断られたときに記録まで失います。分けておけば、断られても記録は残ります。紙の同意書1枚と、チェック欄2つあれば足ります。特別な道具は要りません。

決めた文面を、来店前に読んでもらう形にするなら

文面が決まったら、次は渡し方です。SALONA(サローナ)では同意書を電子化して、ご予約が確定したお客様に署名用のリンクをお送りできます。署名済みの控えはお客様にも共有でき、保護者の方の署名にも対応しています。文面の中に確認項目やお客様の記入欄を作れるので、この記事で決めた2つの問いをそのまま載せられます。予約・電子カルテ・顧客管理・売上管理・LINE連携まで込みで月額¥4,980(最安水準。2026年8月時点・予約専用ツールに各機能を別契約で足した構成との比較・自社調べ)、初期費用は0円です。無料トライアルはクレジットカードの登録なしで始められます。

SALONAを見てみる →

よくある質問(FAQ)

Q. 写真の許可は、口頭でもらうだけで大丈夫ですか。
A. 口頭で伝えること自体は問題ではありませんが、それだけで済ませると、承諾いただいた範囲が残りません。顔まで含んでよいのか、自店のSNSだけなのか、紙の広告も含むのか、いつまでなのか。この4つは、あとから記憶で確かめられるものではないためです。担当者が変わったときにも引き継げません。書面(紙でもタブレットの画面でも構いません)で残しておくと、承諾いただいた範囲がそのまま運用の基準になります。おすすめは、来店前か受付の段階で、記録用と掲載用の2問に分けて一度に取る形です。撮る直前に聞くと、お客様は断りにくく、店の側は忙しさで聞きそびれます。

Q. 一度もらった同意は、いつまで有効ですか。
A. 期限は、店が文面で決めることになります。決めていない場合、お客様の側からは「いつまで残るのか分からない」状態になり、後々の行き違いにつながります。記録用は「カルテの保存期間に準じる」、掲載用は「削除のお申し出があるまで」といった書き方が実務では扱いやすい形です。あわせて注意したいのが、使い道を増やすときは取り直すことです。自店のSNSだけの想定で承諾いただいた写真を、あとからチラシや外部の媒体に使うのは、伝えた目的の外に出ることになります。行き先が増えたときは、同じ写真であっても改めて確認します。

Q. 未成年のお客様の写真は、どう扱えばいいですか。
A. 保護者の方の確認と署名をいただく形にして、どの年齢から必要かを店として決めておきます。個人情報保護委員会は、同意によって生じる結果を判断できる能力について「一般的には12歳から15歳までの年齢以下の子どもについて、法定代理人等から同意を得る必要があると考えられます」としています(2026年8月4日確認)。これは個人情報の取り扱い一般についての目安です。写真の掲載はいったん外に出ると取り戻しにくいため、この目安より高めの年齢を店の運用として置いているお店もあります。どこに線を引くにしても、担当者によって判断が変わらないよう数字で決めておくことが大切です。判断に迷う場合は専門家にご相談ください。

運営: 株式会社art crat./SALONA編集部
公開日: 2026-08-04 最終更新: 2026-08-04
小規模・個人サロン、自費の治療院の経営・集客・カルテ・ツール選びに、現場の手順で具体的に答えるメディアです。本記事のお客様の声は、SALONA利用サロンへのヒアリングに基づき、特定できない形に匿名化して掲載しています。
本記事は肖像権・個人情報の取り扱いについて、公的資料に基づく一般的な考え方を紹介するものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。判断に迷う場合は弁護士などの専門家にご相談ください。制度・ガイドラインの内容は改定されます。記載は2026年8月4日時点のものです。
参照した一次情報: 最高裁第一小法廷 平成24年2月2日判決(平成21年(受)第2056号・氏名/肖像等と人格権)個人情報保護委員会 ガイドラインQ&A Q1-13(カメラ画像と個人情報・利用目的の特定)同 Q1-2-1(利用目的をどの程度まで特定するか)同 Q1-62(未成年者と法定代理人等の同意)同 FAQ(要配慮個人情報)
本記事は、関連する記事が増えるたびに加筆しています。

この記事をシェア

XでシェアLINEで送る