整骨院の回数券は「前受金」|都度払いと分けて管理する方法
整骨院の回数券で受け取ったお金は、売った時点では「前受金」です
整骨院や整体院で回数券を売ると、まとまったお金が一度に入ります。ここで多くのオーナーが迷うのが「このお金は、いつ売上にすればいいのか」という点です。結論から言うと、回数券で受け取ったお金は売った時点では「前受金(預かり)」で、来院して施術した分だけ毎回の売上になります。だから帳簿は、都度払いの売上と回数券の販売・消化を最初から分けて記録する必要があります。
この記事では、回数券を前受金として都度払いと分けて管理する考え方と、その実務の手順をまとめます。
この記事でわかること
- 回数券のお金が「前受金」になる理由と、売った日・使った日でお金と売上がどう動くか
- 都度払い・回数券・サブスクが混ざると見えなくなる数字
- 紙台帳・Excel・アプリ、それぞれで都度払いと回数券を分けて管理する方法と限界
結論:回数券は「売った時に全額売上」にしない
先に答えを出します。回数券を売ったお金の扱いは、次の2点を守ると整理しやすくなります。
- 回数券を売った日は「お金は入るが、売上は0」(受け取ったお金は前受金として預かる)
- 来院して施術した日に、使った1回分だけを売上に計上する
「回数券を売った月に全額を売上にする」やり方は、一見シンプルですが、後でお金の感覚が狂いやすくなります。なぜなら、その月に売れた回数券のお金は「これから来院してもらう分」を先に受け取っているだけだからです。施術という役務を提供して、はじめて売上として確定する、という順番で考えると、都度払いと回数券は最初から別々に記録するのが自然になります。
ここでいう前受金とは、商品やサービスを提供する前に受け取ったお金のことで、会計上は「これから提供する義務」を負っている預かり金として扱われる、とされています。
なぜ「分けて管理」しないと数字が狂うのか
回数券を売った月に全額を売上として計上すると、その月の月商が実態より大きく見えます。一方で、回数券で来院した月は施術しても新しい入金が無いため、月商が実態より小さく見えます。
つまり、回数券を一度に売上計上すると、お金が入った月だけ数字が膨らみ、実際に来院が増えている月の動きが見えなくなります。
さらに気をつけたいのが資金繰りです。回数券を売った月に「今月はよく売れた」と全額を売上のつもりで使ってしまうと、これから来院してもらう分まで先に使うことになります。帳簿上は黒字に見えても、手元の資金が「これから提供する施術の前受け分」で水増しされている状態です。前受金として分けて把握しておかないと、「黒字なのに資金が足りない」という錯覚が起きやすくなります。
代表の視点:キャッシュがある=うまくいっている、ではない
キャッシュフローの観点では、回数券で前受金を先に受け取れる分、経営基盤は安定しやすくなります。資金繰りの面で前受金が強い武器になるのは確かです。ただ、私が日頃お店の方々と話していて思うのは、手元にキャッシュがあること自体は、必ずしも経営がうまくいっている証拠ではない、ということです。前受金は「これから返していく(施術で提供していく)お金」でもあります。だからこそ、入ってきたお金を都度払いの売上と一緒くたにせず、前受金として分けて見ておくことが、本当の調子を見誤らないための第一歩になります。
回数券のお金と売上の動き方(早見表)
回数券を「売った日」と「使った日」で、お金(入金)と売上がどう動くかを表にまとめます。例として「5回券・1回あたり相当4,000円・販売価格20,000円」を使います。
| タイミング | 入金(お金の動き) | 売上として計上する額 | 前受金(預かり残) |
|---|---|---|---|
| 回数券を売った日 | +20,000円 | 0円 | 20,000円 |
| 1回目の来院・施術 | 0円 | 4,000円 | 16,000円 |
| 2回目の来院・施術 | 0円 | 4,000円 | 12,000円 |
| …(3〜5回目も同様) | 0円 | 4,000円ずつ | 0円に向かって減る |
| 5回目(使い切り) | 0円 | 4,000円 | 0円 |
ポイントは2つです。
- 入金は最初の1回だけ。売った日にまとめてお金が入ります。
- 売上は来院のたびに少しずつ。施術した分だけ前受金が減り、その分が売上に振り替わります。
この「入金のタイミング」と「売上のタイミング」がずれることが、回数券の管理を難しくする正体です。だからこそ、台帳の段階で都度払いと回数券を分けておくと、後の集計が楽になります。
なお、回数券の購入時点で会計ソフト側でどう仕訳するか(前受金として負債計上し、消化のたびに売上へ振り替えるなど)は、複式簿記の処理に関わります。仕訳の具体的なやり方や税務上の判断は、お使いの会計ソフトや顧問の税理士に確認してください。本記事は「現場の台帳でどう分けて記録するか」の手順に絞ります。
都度払い・回数券・サブスクが混ざると見えなくなる数字
実際の現場では、料金の受け取り方が1種類とは限りません。来院ごとに支払う都度払い、まとめ買いの回数券、月額の定額制(サブスク)が混在することもあります。
これらを1本の数字で合算してしまうと、次のような大事な数字が見えなくなります。
- 本当の月商:回数券のまとめ売りが入った月だけ膨らみ、実態がぼやける
- 来院単価(1回あたりいくら受け取っているか):都度払いと回数券消化が混ざると平均が出せない
- 回数券の残(これから提供する義務=前受金の残高):いくら預かっていて、何回分の施術が残っているか
自費中心の整体院を準備中のオーナーAさん(仮名)も、ヒアリングのなかで「都度払いか、回数券か、サブスクなのかのデータを出せるようにしたい」と話していました。同じ施術でも、どの支払い方法で来院しているのかが分かれば、メニューの設計や声かけの優先順位を判断しやすくなる、という発想です。
SALONA利用サロンへのヒアリングに基づき匿名化して掲載しています。
この「3つを分けて見たい」というニーズに応える出発点が、支払い方法ごとに記録を分けておくことです。分けて記録していれば、後から「今月の都度払いはいくら、回数券の消化は何回分」と切り出せます。混ぜて記録してしまうと、後から分解するのはほぼ不可能です。
ちなみに、Aさんは「離脱率(前月は来たが今月は来ていないお客様の割合)は最低でも15%以下にしたい」「月の平均来院回数を2回にしたい」とも話していました。離脱率(失客率)や来院回数といった指標も、支払い方法が混ざっていると正しく追えません。回数券のお客様は来院間隔が読みづらいことが多く、都度払いと一緒くたにすると、本当に離れたのか、回数券を消化中で間隔が空いているだけなのかが区別できなくなるためです。離脱率の見方は失客率・離脱率とは?計算方法と見方で詳しく解説しています。
都度払いと回数券を分けて管理する3つの方法
では、実務でどう分けるか。代表的な3つの方法と、それぞれの限界を整理します。
1. 紙台帳で列を分ける
ノートや台帳に「都度払い欄」と「回数券欄」を分けて記録する、いちばん手軽な方法です。回数券は「販売した日(入金)」と「消化した日(来院)」をさらに分けて書く必要があります。
- 限界:回数券の残数を毎回手で引き算するため、枚数を間違えやすくなります。お客様が「あと何回残っていますか」と聞いたとき、台帳をめくって数える手間もかかります。お客様が増えるほど破綻しやすい方法です。
2. Excel・スプレッドシートで列を分ける
表計算ソフトで「都度払い」「回数券販売」「回数券消化」の列を分け、関数で残数や月間の集計を自動計算する方法です。紙より集計は楽になります。
- 限界:回数券を消化するたびに、対象のお客様の残数を手で1つ減らす運用が必要です。入力を1回忘れると残数がずれ、それに気づかないまま使い続けると数字が合わなくなります。お客様が複数の券を持っていたり、有効期限が違ったりすると、管理する列がどんどん増えて複雑になります。
3. メニュー側で支払い方法を分類する/アプリで自動でタブ分割する
予約・売上の管理ツールを使い、メニューやタブで「都度払い」「回数券」を最初から分類しておく方法です。回数券の販売と消化を別の記録として持ち、消化のたびに残数が自動で減れば、手作業の引き算が要らなくなります。
- 限界:ツールの導入は必要ですが、お客様が増えてくると、結局この自動化が現実的な選択肢になります。Aさんが触れていたサブスク(定額制)まで支払い方法を細かく分けたい場合は、ツールによって対応の範囲が違うため、メニューの分け方で運用を工夫することになります。
よくある失敗:回数券を「売れた月の売上」にしてしまう
回数券の管理で多いつまずきを、先回りで挙げておきます。
- 売った月に全額を売上扱いし、来院月の数字をゼロにしてしまう:月商が乱高下し、来院の傾向が読めなくなります。前受金として分け、来院のたびに計上するのが基本です。
- 回数券の残(前受金の残高)を把握していない:いくら預かっていて、何回分の施術が残っているかを管理しないと、いざ閉院や移転のときに精算で困ります。
- 回数券のまとめ売り=必ず資金が安定する、と考える:回数券は前払いの預かりであり、これから提供する義務です。売れた分だけ「先に施術を約束した」状態でもあるため、まとめ売りすれば安泰、とは限りません。先食いのリスクを併せて意識しておくと安全です。
- 有効期限を決めずに無期限で売る:後述の資金決済法の観点でも、長期・無期限はリスクがあります。
有効期限と資金決済法の注意点
回数券は、法律上「前払式支払手段」に該当する場合があるとされています。一般的な解説によると、有効期限を発行から6ヶ月未満に設定したものは、資金決済法の適用対象外とされています。
一方、無期限や長期の回数券を多く販売する場合は、未使用残高に関する義務(供託など)が生じることがある、とされています。回数券の設計(有効期限・販売量)によっては専門的な対応が必要になるため、迷う場合は専門家に相談してください。
実務としては、有効期限を設けておくこと自体が、前受金の残高を管理しやすくする効果もあります。期限があれば「いつまでに何回分を提供するか」の見通しが立ちます。
業態別の注記
回数券(チケット制)は整骨院・整体院だけのものではありません。支払い方法を分けて管理する考え方は、まとめ売りをするサロン全般に当てはまります。
- 美容室:トリートメントやヘッドスパの回数券、前髪カット定額など。基本メニューと回数券消化、オプションを分けて記録すると、客単価が正しく見えます。
- ネイル・まつげ:付け替えの回数券やオフ込みのまとめ売り。オプション(アート・ケアなど)は回数券に含めず別計上にすると混乱しません。
- エステ:コース契約の回数券は金額が大きいぶん、前受金の残高管理がとくに重要です。
- 整骨院・整体院:自費メニューの回数券が中心。施術効果の表現には触れず、あくまで通い方・支払い方法の整理として案内するのが安全です。予約管理まわりの選び方は整体院・整骨院の予約管理|自費メニュー中心の小さな院のシステム選びも参考にしてください。
業態を問わず、「販売(入金)」と「消化(来院・施術)」を分けて記録する原則は同じです。
まとめ:回数券は「預かり金」として、都度払いと分けて記録する
整骨院・整体院の回数券は、売った時点では前受金(預かり)で、来院して施術した分だけ売上になります。だから帳簿は、都度払いの売上と回数券の販売・消化を最初から分けて記録するのが基本です。
- 回数券を売った日は「入金あり・売上0」、来院日は「入金0・売上計上」
- 都度払い・回数券・サブスクを混ぜると、本当の月商・来院単価・前受金の残が見えなくなる
- 紙やExcelは残数の手作業が破綻しやすい。お客様が増えたらメニュー分類やアプリでの自動分割が現実的
回数券の販売金額と、都度払いの売上を分けて把握できると、「本当の数字」が見えてきます。SALONA(サローナ)の回数券機能では、売上入力と売上管理の画面に「回数券」タブが追加され、回数券の販売だけをまとめて確認でき、月間の販売金額・件数も一目で分かります。「その他」タブには回数券販売は含まれず、「全体」タブで合算されるため、都度払いと回数券を分けて表示できます。来院ごとに1枚消費すると基本メニューは¥0で記録され(オプションメニューと指名料は回数券の対象外)、残数の確認や失効日の調整も画面から行えます(会員証機能をオンにしてご利用いただけます)。
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よくある質問(FAQ)
Q. 回数券を売ったお金は、いつ売上として計上すればいいですか?
A. 一般的な考え方では、回数券を売った時点では前受金(預かり)として扱い、来院して施術した分だけ、その都度売上に計上するとされています。売った月に全額を売上にすると、月商が実態より大きく見えてしまいます。具体的な会計処理や税務の判断は、会計ソフトや税理士にご確認ください。
Q. 都度払いと回数券の売上は、なぜ分けて記録するのですか?
A. 入金のタイミング(売った日)と、売上が確定するタイミング(来院した日)がずれるためです。混ぜて記録すると、本当の月商・来院単価・回数券の残(前受金の残高)が見えなくなり、後から分解することも難しくなります。最初から分けておくのが安全です。
Q. 回数券に有効期限は付けたほうがいいですか?
A. 有効期限を発行から6ヶ月未満に設定したものは資金決済法の適用対象外とされており、無期限・長期だと未使用残高に関する義務が生じることがある、とされています。期限を設けることは前受金の残高管理にも役立ちます。販売量や設計によっては専門的な対応が必要なため、迷う場合は専門家にご相談ください。
運営:株式会社art crat./SALONA編集部
公開日:2026-06-21/最終更新:2026-06-21
本記事のN1(お客様の声)は、SALONA利用サロンへのヒアリングに基づき匿名化して掲載しています。会計・税務・法律に関する記述は一般的な解説であり、個別の判断は税理士・専門家にご相談ください。