損益分岐点とは?個人サロンが最低いくら売れば黒字かの出し方
損益分岐点とは「ここを超えれば黒字」の売上ラインです
損益分岐点とは何か、そして個人サロンが「最低いくら売れば黒字か」を、自分の店の数字で出せる形で解説します。難しい会計の話に聞こえますが、覚える式は1本だけです。むしろ大事なのは、式より「自店の費用をどう分けて拾うか」のほうです。ここを手順で示します。
この記事でわかること
- 損益分岐点とは何か(一言の意味と、最低いくら売れば黒字かの考え方)
- 損益分岐点の計算式と、架空サロンの数字を当てはめた具体例
- 出すときによくある誤解と、個人サロンならではの注意点
結論:損益分岐点とは「赤字でも黒字でもない売上額」
先に答えです。損益分岐点(そんえきぶんきてん)とは、売上と費用がちょうど同じになる売上額のこと。この線を1円でも超えれば黒字、下回れば赤字になります。
つまり「最低いくら売れば黒字か」の答えそのものです。個人サロンなら、毎月この売上ラインを把握しておくだけで、「今月はあと何人来てもらえば赤字を抜けるか」が見えるようになります。
計算式は次の1本です。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
式はこれに固定して構いません。難しいのは式ではなく、自店の費用を「固定費」と「変動費」に分ける作業です。そこを次から手順で進めます。
なぜ個人サロンで損益分岐点が大事か
個人サロンは、人件費を自分の働きでまかなえる分、固定費の構造がシンプルです。だからこそ損益分岐点が「現実の目標」として効きます。
たとえば、こんな場面で役立ちます。
- 月末に「今月は黒字だったのか赤字だったのか」がすぐ分かる
- 「あと何人・何回来てもらえれば黒字ラインに届くか」を逆算できる
- 家賃の高い物件に移ってよいか、値上げすべきか、を数字で判断できる
「なんとなく売上が立っているから大丈夫そう」では、月によっては気づかぬうちに赤字が続きます。損益分岐点という1本の線を持っておくと、毎月の売上をその線の上か下かで評価できます。感覚ではなく、超えた/超えていないで判断できるのが強みです。
なお、損益分岐点は客単価(お客様1人あたりの平均会計額)とセットで見ると、さらに使いやすくなります。「黒字ラインの売上 ÷ 客単価」で、最低何人来てもらえばよいかという人数に置き換えられるからです。
出し方・計算の手順
損益分岐点は、次の3ステップで出せます。
ステップ1:費用を「固定費」と「変動費」に分ける
まず、毎月かかっているお金を2種類に分けます。
- 固定費 … 売上が増えても減ってもほぼ一定でかかる費用(家賃・通信費・保険・サブスク料金など)
- 変動費 … 売上に比例して増減する費用(施術に使う材料・店販商品の仕入れ・決済手数料など)
この分け方そのものは固定費・変動費とはの記事で詳しく扱っています。迷ったら「来店ゼロの月でも出ていくか?」で考えると分けやすいです。家賃はゼロでも出ていくので固定費、材料費は来店ゼロなら出ていかないので変動費、という具合です。
ステップ2:変動費率を出す
次に、売上に対して変動費がどれくらいの割合かを出します。これを変動費率と呼びます。
変動費率 = 変動費 ÷ 売上
たとえば月の売上が50万円、そのうち材料費などの変動費が10万円なら、変動費率は 10万 ÷ 50万 = 0.2(20%)です。この変動費率は、施術に直接かかる費用の割合を表す原価率(売上に占める材料・仕入れの割合)の考え方と近いものです。
ステップ3:式に当てはめる(架空の例)
費用を分けて変動費率が出たら、あとは式に入れるだけです。以下はすべて架空の例で、実在のサロンの集計値ではありません。自店の数字に置き換えてお使いください。
架空サロンC(個人サロン)の1か月を例にします。
| 項目 | 金額 | 区分 |
|---|---|---|
| 家賃 | 12万円 | 固定費 |
| 通信・サブスク・保険など | 3万円 | 固定費 |
| 固定費 合計 | 15万円 | — |
| 材料費・店販仕入れ・決済手数料 | 売上の20% | 変動費 |
このとき計算は次のようになります。
- 変動費率 = 0.2
- 1 − 0.2 = 0.8
- 損益分岐点売上高 = 15万円 ÷ 0.8 = 18.75万円(約19万円)
つまり架空サロンCは、月に約19万円売れば赤字でも黒字でもない状態になります。これを1円でも超えた分が利益のもとになります(架空の例)。
客単価が7,000円なら、19万円 ÷ 7,000円 = 約27人。月に27人ほど来てもらえば黒字ラインに届く、と人数に置き換えられます。ここまで来ると、毎月の目標がぐっと具体的になります。
自分の生活費(オーナー自身の取り分)も毎月確保したいなら、その金額を固定費に足してから計算します。たとえば生活費20万円を固定費に乗せると、固定費は35万円。35万円 ÷ 0.8 = 約43.75万円が「生活費まで含めた損益分岐点」になります(架空の例)。
「数字が苦手」でも使える、現場での持ち方
会計の教科書では損益分岐点をグラフで説明することが多いですが、個人サロンでグラフを毎月描く必要はありません。現場で使うときは、次の2つの数字だけ手元に置けば十分です。
- 黒字ラインの売上額(今回でいう約19万円)
- それを客単価で割った最低人数(約27人)
この2つを月初にメモしておき、月の途中で「いま何人・いくらまで来たか」を照らし合わせる。それだけで「あと何人で黒字を抜けるか」が毎日分かります。
中小企業向けの公的支援機関である中小企業庁も、創業者向けの資料で損益分岐点を「事業がうまくいくかを判断する基本指標」として取り上げています(出典:中小企業庁「経営に役立つ会計」関連資料)。専門家でなくても押さえるべき、最初の1本の数字という位置づけです。
💡 編集部の現場メモ 個人サロンは人件費を自分の労働でまかなえるぶん、固定費が「家賃+数万円」に収まることが多いです。すると損益分岐点は意外と低く、月10〜20万円台に収まる店も珍しくありません。問題は金額の高さより、毎月その線を意識しているか。線を1本引いておくだけで、「今月は厳しい」が月末ではなく月半ばで分かります。(※このメモは編集部のたたき台です)
よくある誤解・NG
損益分岐点を出すときに、つまずきがちな点をまとめます。
- オーナー自身の生活費を費用に入れ忘れる … 個人サロンで一番多い見落としです。家賃などだけで損益分岐点を出すと「黒字」に見えても、自分の取り分はゼロ、ということが起こります。生活費を確保したいなら、その金額を固定費に足して計算しましょう。
- すべての費用を固定費として計算してしまう … 材料費まで固定費に入れると、損益分岐点が実態より高く出ます。「来店ゼロの月でも出ていくか」で固定費と変動費を分けるのが先です。
- 回数券やコース前受金を売れた月の売上に全額入れる … 前もって受け取ったお金を一括で売上に乗せると、その月だけ黒字に見え、施術する月は赤字に見えます。お金が動いた月と、施術した月のズレに注意しましょう。
- 一度出して終わりにする … 家賃やメニュー単価が変われば損益分岐点も動きます。半年に一度は見直すのが現実的です。
- 「最低ライン=目標」と勘違いする … 損益分岐点はあくまで赤字を抜ける線で、利益が出る線ではありません。目標売上は、この線に「残したい利益」を足して設計します。
まとめ
損益分岐点とは「赤字でも黒字でもない売上額」、つまり最低いくら売れば黒字かの答えです。個人サロンでの押さえどころは3点です。
- 式は1本に固定する … 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
- 費用を固定費と変動費に正しく分ける … 「来店ゼロでも出ていくか」で判断する
- 客単価で割って人数に置き換える … 「あと何人で黒字か」まで落とすと毎日使える
数字が苦手でも、黒字ラインの売上額と最低人数の2つだけ手元に置けば、毎月の経営判断は驚くほど具体的になります。
損益分岐点は、経営で見るべき数字の入り口の1つです。客単価・リピート率・原価率などと合わせて、どの数字から見ればよいかはサロン経営で見るべき数字・KPI入門で全体像を整理しています。
数字を分けて拾うのが面倒なら、会計を入れるだけで把握する方法も
損益分岐点を出す前段で一番手間なのは、費用を分けて拾うことと、客単価を毎月把握することです。
SALONA(サローナ)では、日々の会計を入力するだけで客単価が会計データから自動で算出され、流入経路・年代・メニュー別など複数の切り口で「人数と売上」を確認できます。損益分岐点の計算で使う売上や客単価の把握を、手集計なしで回せる選択肢です。予約・電子カルテ・売上管理・顧客管理・LINE連携が全部込みで月額¥4,980(最安水準。2026年6月時点・予約専用ツールに各機能を別契約で足した構成との比較・自社調べ)。
よくある質問(FAQ)
Q. サロンの損益分岐点とは何ですか?
A. 売上と費用がちょうど同じになる売上額のことです。この線を超えれば黒字、下回れば赤字になります。つまり「最低いくら売れば黒字か」の答えそのものです。個人サロンなら、毎月この売上ラインを把握しておくと、あと何人来てもらえば赤字を抜けるかを逆算できます。
Q. 損益分岐点はどう計算しますか?
A. 「固定費 ÷(1 − 変動費率)」で計算します。たとえば固定費が15万円、変動費率が20%(0.2)なら、15万 ÷(1 − 0.2)= 15万 ÷ 0.8 = 約19万円が損益分岐点です(架空の例)。先に費用を固定費と変動費に分け、変動費率(変動費 ÷ 売上)を出してから式に入れます。
Q. 個人サロンで黒字にするには、まず何を確認すればいいですか?
A. まず自店の損益分岐点売上高を1つ出し、それを客単価で割って「最低何人来てもらえば黒字か」を人数に置き換えるのがおすすめです。オーナー自身の生活費を確保したい場合は、その金額を固定費に足してから計算します。月初にこの金額と人数をメモし、月の途中で実績と照らし合わせると判断が具体的になります。
運営:株式会社art crat./SALONA編集部
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公開日:2026-06-11/最終更新日:2026-06-11