基礎・用語解説

固定費・変動費とは?サロンのコストの分け方をやさしく解説

8分で読める

サロンの費用は「2つに分ける」だけで、見える景色が変わります

固定費・変動費とは何か、そしてサロンのコストをどう分ければいいかを、数字が苦手な方でも追える形でやさしく解説します。

固定費・変動費とは、ざっくり言えば「売上が増えても変わらない費用」と「売上に連れて増える費用」のこと。むずかしい会計用語に見えますが、家賃や材料費といった身近な費用を2つの箱に振り分けるだけです。この分け方ができると、「あと何人来てもらえば赤字を抜けるか」がはっきり見えてきます。

この記事でわかること

  • 固定費・変動費とは何か、その違いを一言で
  • 家賃・材料費・人件費などを、どちらに振り分けるかの手順
  • 迷いやすい費用の見分け方と、損益分岐点とのつながり

結論:費用を「動かない箱」と「連れて動く箱」に分ける

先に答えです。サロンの費用は、次の2つの箱に分けて考えます。

固定費 = 売上が増えても減っても、毎月ほぼ一定でかかる費用
変動費 = お客様が増えるほど、それに連れて増えていく費用

固定費の代表は家賃です。お客様が10人でも100人でも、家賃は変わりません。変動費の代表は材料費(薬剤・ジェル・グルーなど)です。施術が増えれば、その分だけ使う量も増えます。

この「動かない箱」と「連れて動く箱」に分けるだけで、後の計算がぐっと楽になります。むずかしく考える必要はありません。「お客様が1人増えたとき、この費用は増える?増えない?」——この問いに答えるだけです。


なぜサロンで「分けること」が大事なのか

費用をぜんぶ一緒くたに「経費」として眺めていると、ある大事な質問に答えられません。それは——「今月、あと何人来てもらえれば黒字になるのか」です。

たとえば、売上が落ちた月に「経費が30万円かかった」とだけ分かっても、打ち手は見えません。けれど、そのうち家賃や通信費など毎月固定で出ていく分(固定費)と、お客様の数に応じて増える分(変動費)を分けておくと、話が変わります。

固定費は「お客様ゼロでも出ていくお金」です。だから、まずはこの固定費を売上の利益でまかなえる人数まで来てもらう必要がある——という考え方ができます。これが損益分岐点(売上と費用がちょうど釣り合い、赤字でも黒字でもなくなる地点)の発想です。固定費と変動費を分けていないと、この分岐点は計算できません。

つまり費用を2つに分けることは、それ自体がゴールではなく、「経営の体温計」を持つための準備なのです。


出し方・手順:費用を2つの箱に振り分ける

やることはシンプルです。手元の経費を1つずつ、次の問いで振り分けていきます。

① 「お客様が増えても変わらない費用」を固定費に入れる

毎月ほぼ同じ金額で出ていく費用を、固定費の箱に入れます。サロンでよくあるものを挙げます。

  • 家賃・共益費
  • 水道光熱費の基本料金部分
  • 通信費(ネット・電話)
  • リース料(チェア・機器など)
  • 各種ツールの月額利用料
  • 自分(オーナー)に固定で払う役員報酬や、固定給のスタッフ人件費

② 「お客様が増えると増える費用」を変動費に入れる

施術や販売の数に連れて増える費用を、変動費の箱に入れます。

  • 材料費(薬剤・カラー剤・ジェル・グルー・まつげ材料など)
  • 店販商品の仕入れ(売れた分だけ仕入れる場合)
  • 歩合給の人件費(施術数や売上に応じて変わる分)
  • 予約サイト経由の送客手数料(1件あたりで発生する場合)
  • 決済手数料(売上に対して数%)

③ 振り分けた表をつくる(架空の例)

実際に表にすると、こう見えます。以下はすべて架空の例で、実在のサロンの数字ではありません。自店の金額に置き換えてお使いください。

架空サロンC(個人サロン・1人運営)の1か月:

費用金額分類
家賃100,000円固定費
ツール月額・通信費20,000円固定費
水道光熱費(基本料分)10,000円固定費
材料費売上の約10%変動費
決済手数料売上の約3%変動費

この架空サロンCの場合、固定費は毎月13万円。お客様がゼロでも、この13万円は出ていきます。一方、変動費は「売上の約13%」という形で、来店が増えるほど増えます。

ここまで分けられれば、「13万円の固定費をまかなうには、利益(売上から変動費を引いた残り)でいくら必要か」という損益分岐点の計算に進めます。費用を2つに分けることが、その入り口です。


迷いやすい費用の見分け方

実務では「これはどっち?」と迷う費用が必ず出てきます。中小企業庁などが示す会計の考え方でも、固定費・変動費の線引きは業種や捉え方で幅があるとされています(出典:中小企業庁「中小企業の会計に関する指針」など)。つまり、世界共通の唯一の正解があるわけではありません。迷ったら、次の見分け方で十分です。

見分け方のコツ:「お客様が1人増えたら、この費用は増える?」と問う

  • 増える → 変動費
  • 増えない → 固定費

この問いに当てはめると、迷いがちな費用も整理できます。

迷いやすい費用考え方多くの場合
人件費(固定給)客数に関係なく毎月同額固定費
人件費(歩合・時給バイト)施術数や稼働で変わる変動費
水道光熱費基本料金は固定、使った分は変動両方に分けてもOK
広告費毎月定額なら固定、成果報酬型なら変動契約形態による

大事なのは、完璧に分けることより、自分の中で線引きのルールを決めて毎月同じ基準で続けることです。水道光熱費のように両方の性質を持つ費用は、「全部まとめて固定費に入れる」と決めてしまっても構いません。月ごとにルールがブレなければ、比較に使える数字になります。

迷ったときの安全な置き方として、「客数に連動するものだけを変動費にし、残りは全部固定費にまとめる」というシンプルな方針があります。個人サロンなら、まずこれで十分実用になります。


よくある誤解・NG

固定費・変動費を扱うときに、つまずきやすいポイントです。

  • 「固定費=悪、削るべきもの」と思い込む … 固定費は無駄ではありません。家賃やツール代は、サロンを続けるための土台です。やみくもに削ると、サービスの質や効率まで落ちます。分けるのは「削るため」ではなく「分岐点を知るため」です。
  • 毎月、分類のルールを変えてしまう … 先月は広告費を固定費、今月は変動費……とブレると、月ごとの比較ができません。一度決めた線引きは、しばらく固定して使います。
  • オーナー自身の人件費を入れ忘れる … 1人サロンだと「自分の取り分」を費用に入れ忘れがちです。自分が生活していくために必要な金額も、固定費として最初から見込んでおくのが現実的です。
  • 1円単位の完璧さを目指して挫折する … 経理のプロを目指すわけではありません。ざっくり2つの箱に分かれていれば、経営判断には十分使えます。
  • 分けただけで満足する … 分類はゴールではありません。分けた数字を損益分岐点の計算や、毎月の振り返りに使ってはじめて意味が出ます。

まとめ

固定費・変動費とは、サロンの費用を「動かない箱」と「連れて動く箱」に分ける考え方です。次の3点を押さえれば、明日から使えます。

  1. 固定費=客数に関係なく毎月かかる費用(家賃・ツール代・固定給など)
  2. 変動費=お客様が増えると増える費用(材料費・歩合給・決済手数料など)
  3. 迷ったら「お客様が1人増えたら増える?」で振り分け、ルールは固定して続ける

この2つに分けることは、それ自体が目的ではなく、「あと何人来てもらえば黒字か」を知る損益分岐点の入り口です。費用を分けて見る習慣は、見るべき数字を整える第一歩になります。経営全体でどんな数字を追えばいいかは、サロン経営で見るべき数字の入門もあわせてご覧ください。


よくある質問(FAQ)

Q. 固定費と変動費の一番かんたんな見分け方は?
A. 「お客様が1人増えたとき、その費用は増えますか?」と問うのが一番かんたんです。増えるなら変動費(材料費・歩合給など)、増えないなら固定費(家賃・ツール代など)です。水道光熱費のように両方の性質を持つ費用は、自分の中でルールを決めて毎月同じ基準で振り分ければ問題ありません。

Q. 個人サロンでも固定費・変動費を分ける意味はありますか?
A. あります。むしろ1人運営こそ効果が大きいです。固定費を把握すると「お客様ゼロでも毎月いくら出ていくか」が分かり、「あと何人来てもらえば赤字を抜けるか」という損益分岐点が計算できます。完璧な経理は不要で、ざっくり2つの箱に分かれていれば判断に使えます。

Q. 固定費と変動費、どちらを先に削るべきですか?
A. 「削る」を出発点にしないことをおすすめします。固定費はサロンを続ける土台で、やみくもに削るとサービスの質や効率が落ちることもあります。まずは正しく分類し、損益分岐点を把握するのが先です。そのうえで、自店の昨年と今年を比べて不自然に増えた費用があれば、固定・変動の両方を見直す、という順番が現実的です。


数字を分ける前に、まず「記録」を整えるところから

固定費・変動費の分類は、日々の売上と費用がきちんと記録されていてこそ活きます。記録がバラバラだと、せっかく分けても比較に使えません。

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運営:株式会社art crat./SALONA編集部
小規模・個人サロン、自費の治療院の経営・集客・ツール選びに、現場の手順で具体的に答えるメディアです。
公開日:2026-06-11/最終更新日:2026-06-11

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