美容室のカラー放置中に別の客を入れていい?予約を重ねる判断基準
カラーの放置中に手が空く時間を、売るか売らないかの決め方
美容室のカラー放置中に別の客を入れていいのか。整体で機械にお任せしている間、次の方を受けてよいのか。手は空いているのに予約の枠は埋まったまま、という時間は、ひとりで回している店ほど積み上がります。結論から言うと、判断できるのは「工程を分解して、手が離れる時間を数え終えたあと」です。この記事でわかることは3つ。(1)1つのメニューから手が離れる時間を数える手順、(2)重ねてよい組み合わせを見分ける4つの条件、(3)重ねるのをやめる撤退ラインの決め方です。紙の予約台帳でも、カレンダーアプリでも、同じ判断ができます。
結論:重ねてよいかは「手が離れる時間」と4つの条件で決まる
順番はこうです。
- 1つのメニューを工程に分解して、手が離れる時間が何分あるかを実測する。
- その時間に入れてよい施術かどうかを、4つの条件で判定する。
- 重ねたときに何が壊れるかを先に書き出し、撤退ラインを決めておく。
- 回収できる時間と金額を見積もり、やる・やらないを決める。
大事なのは4番です。手が空く時間があることと、そこを売った方が得なことは、別の話です。放置の時間が短い店や、1件あたりの単価が高い施術を中心にしている店では、重ねない方が手元に残るお金は多くなります。この記事は「重ねましょう」という記事ではありません。重ねるか重ねないかを、感覚ではなく数字と条件で決めるための記事です。
なお、ベッドや機材が何台あるかという物理的な上限の話はサロンの予約枠はベッド・機材の台数で決まる|設備から考える枠設計に、施術と施術の間に片付けの時間を挟む話はサロンの予約に準備時間(インターバル)を設定する方法|バタつかない枠設計にまとめてあります。この記事が扱うのは、1人の施術者の時間を、1つの施術の内側でどう重ねるかです。役割が違うので、必要な方はそれぞれを先に読んでいただいても構いません。
「空いているのに売れない時間」が生まれる理由
予約の枠は、ふつうメニュー1つ=ひとかたまりの時間として登録されています。カラーが90分なら90分ぶん、施術が60分なら60分ぶん、まるごと埋まります。
ところが実際の90分は、均質ではありません。カラーなら、カウンセリングがあり、塗布があり、薬剤が作用するのを待つ時間があり、流して、乾かして、仕上げます。このうち施術者が張り付いている必要があるのは、待ち時間を除いた部分です。自費の整体や鍼灸でも、機器を使う工程では同じことが起きます。
つまり、予約の枠は「施術の長さ」で取られているのに、実際に売れなくなっているのは「施術者の時間」ではない。ここにずれがあります。ひとりで回している店では、このずれがそのまま売上の天井になります。
さらにやっかいなのは、この時間が数字に出てこないことです。稼働率(営業できる時間のうち、実際に施術している時間の割合)を計算すると、放置時間も「施術している時間」として数えられます。帳簿の上では埋まっているので、問題として浮かび上がりません。手が空いている感覚だけが残り、数字では説明できない。だから多くの店で、この判断は先送りされます。
判断を止めているのは、もう1つあります。「重ねると雑になるのではないか」という不安です。この不安は正しいものです。ただ、不安のままにしておくと、重ねる・重ねないのどちらにも決められません。次から、これを条件に分解していきます。
① 1つのメニューを工程に分解して、手が離れる時間を数える
最初にやることは、設定でも予約表でもありません。ストップウォッチです。
いちばん件数の多いメニューを1つ選び、次の週の施術で実際に測ります。測るのは3つです。
- 工程の切れ目:カウンセリング/準備/施術(前半)/待ち時間/施術(後半)/仕上げ/お会計、のように区切ります。
- 各工程で、店を離れられるか:完全に離れられる/同じ部屋にいる必要はないが呼ばれたら戻る/張り付いている、の3段階で記録します。
- 離れられる時間が、1回のメニューで何分・何回あるか:合計だけでなく、1回あたりの長さが要ります。5分が4回と、20分が1回では、意味がまったく違います。
3回ほど測ると、自分の店の平均が見えてきます。ここで大事なのは、メーカーや教科書の標準時間を使わないことです。薬剤の作用時間はメーカーや商材によって幅があり、案内される目安もそれぞれ違います。自店で実際に何分待っているかは、測らないと分かりません。
測り終えたら、次の3つを紙に書きます。
- 手が離れる時間の1回あたりの長さ(例:この店のカラーは1回20分)
- その時間の確からしさ(毎回ほぼ同じか、お客様によって10分ぶれるか)
- その時間に店を出られるか(隣の席までなら離れられる/レジまでなら行ける/外には出られない)
ここが分からないうちは、重ねる判断はしません。ぶれ幅の分からない時間に、別のお客様の予定を乗せることはできないからです。1回20分と分かっている店と、「だいたい15分から30分」の店では、取れる選択がまったく変わります。
② 重ねてよい組み合わせを見分ける4つの条件
手が離れる時間が数えられたら、そこに何を入れてよいかです。次の4つを、すべて満たすかどうかで見ます。
条件1:待たせている側の仕上がりが、時間のずれに左右されないか。
待ち時間には2種類あります。戻る時刻が決まっている待ち時間と、多少ずれても差し支えない待ち時間です。薬剤の作用時間のように、戻るのが遅れると仕上がりに関わる工程は、前者です。前者の時間に別の施術を入れると、戻る時刻が他人の都合で決まることになります。ここが、重ねる判断でいちばん最初に見るところです。
判定の目安は単純で、「5分遅れて戻ったら、やり直しや説明が必要になるか」。なるなら、その時間は売らない方が安全です。
条件2:新しく入れる側の「最初の数分」が、いちばん手のかかる工程と重ならないか。
見落とされやすいのがこれです。どんな施術でも、最初の数分がいちばん手がかかります。お迎え、ご案内、カウンセリング、お着替えの案内。ここは省けません。
一方で、待たせている側にも「戻ってすぐ手を動かす」瞬間があります。この2つが重なると、どちらかを待たせることになります。だから見るのは合計時間ではなく、手のかかる瞬間どうしがぶつからないかです。20分の手離れ時間に20分の施術を入れると、開始と終了が同時に来て、ちょうどぶつかります。入れる施術は、手離れ時間より短いものを選ぶのが基本です。
条件3:席・機材・部屋を、別に確保できるか。
これは条件というより前提です。同じ椅子、同じ台、同じ機械を使う施術は、時間が空いていても重ねられません。逆に言えば、物理的な場所を分けられる組み合わせから探すのがいちばん早い道です。手が離れる時間があっても、置く場所がなければ売れません。
条件4:2人のお客様が同じ空間にいることを、気にしなくてよい業態か。
ここは業態で逆転します。美容室のように、もともと複数のお客様が同じフロアにいるのが当たり前の業態では、ほとんど問題になりません。一方、個室で1対1のご案内を前提にしている業態や、他の方に見られたくないご相談を含む施術では、この条件だけで重ねない判断になります。「他の方の気配がしないこと」に価値を置いて選ばれている店では、重ねること自体がサービスの引き下げになります。
4つのうち1つでも欠けるなら、その組み合わせは重ねません。4つ全部を満たす組み合わせが1つも見つからない店もあります。それは正常な結果です。
「人が付かない工程は、別の枠にしたい」——ある治療院オーナーの話
ここで、実際にこの判断に向き合っていたオーナーの話を紹介します。ヒアリングに基づき、特定できない形に匿名化しています。聞き取りやすさのために言い回しを整えていますが、内容は変えていません。
ひとりで回している自費の治療院のオーナーAさん(仮名)です。施術台は2台。Aさんの店では、手技の工程と、機器にお任せする工程が分かれていました。
Aさんの言葉です。
「(機器を使う工程は)手技の枠に入れたくないんですよね。人が付かないでやるので」
工夫のポイントは、この言い方そのものにあります。Aさんは「予約を増やしたい」とは言っていません。「人が付かない工程は、人が付く工程と同じ扱いにしたくない」と言っています。売上から発想していないのです。工程の性質から発想して、結果として枠が空く、という順番になっています。
そしてもう1つ。Aさんの店では、施術台2台のうち1台を機器の工程の専用にしていました。
「(施術台を)2台やって、1台を(機器)専用で使ってる」
これは、先ほどの条件3を、設備の側で先に解いてしまった形です。場所を分けておけば、時間の重なりは場所の取り合いになりません。時間の設計を、物の配置で先に固定するという考え方です。ひとりで回している店では、これがいちばん壊れにくい形になります。
ここまでは、うまくいっている話です。ここからが、この記事の核心になります。
Aさんは会話の中で、こういう方法も口にしていました。
「1時間かかるところ、設定では40分にしておけばいいんですよね」
実際に1時間かかる施術を、予約の上では40分として登録する。そうすれば残りの20分は空き枠として開くので、次のお客様を入れられる。手が離れる時間を売るための、いちばん手っ取り早いやり方です。多くの店が、一度は思いつきます。
ただ、このやり方には副作用があります。次の節で扱います。
③ 重ねると壊れるものを先に決めて、撤退ラインを書いておく
先に、さきほどの「短く登録する」やり方の副作用からです。
所要時間を実際より短く登録すると、空き枠は作れます。同時に、お客様に見えている時間が全部ずれます。
ずれるのは3つです。
- 予約画面や確認メールに出る所要時間。40分と書いてあるのに、実際は1時間かかります。
- 終わりの目安。次の予定を入れて来られた方が、間に合わなくなります。
- 当日の案内。「40分ほどで終わります」とご案内した記録が残っているので、遅れた理由を説明できません。
いちばん重いのは3つ目です。遅れの原因が、お客様の側にも、施術の内容にもなく、自分が入れた設定にあるという形になります。遅刻や延長の対応ルールを整えていても、原因が自店の設定だと、そのルールが使えません。お客様側の遅刻をどう扱うかは美容室・サロンの遅刻は何分まで受ける?店側の対応ルールの決め方にまとめてありますが、店側の申告がずれている場合は、そもそもルール以前の問題になります。
置き換えるなら、時間を短く見せるのではなく、工程を分けて考える方向です。「1時間の施術のうち、後半20分は手が離れる」という事実は変えずに、その20分だけを別の予定として扱う。お客様に見えている所要時間は1時間のままにしておく。この違いが、あとで効いてきます。
さて、副作用の話をもう少し広げます。予約を重ねると、次の3つが壊れます。壊れてから気づくのではなく、先に書き出しておきます。
- 遅れが連鎖する。重ねた予約は、前の施術の終わりと後の施術の始まりが噛み合っています。1件が10分遅れると、その日の残り全部が10分ずれます。ひとりで回している店には、遅れを吸収する担当者がいません。
- 仕上げの工程が同時に来る。2人のお客様の仕上げが重なると、どちらかを待たせます。しかも仕上げは、いちばん手を抜けない工程です。
- 声かけが減って、体感の待ち時間が伸びる。実際の待ち時間が同じでも、様子を見に来てもらえない15分は、はるかに長く感じられます。重ねると、この声かけが最初に削られます。
そこで、撤退ラインを先に書きます。書き方は「何が、どのくらい、何回起きたら、やめるか」です。例を挙げます。
- 予定より20分以上遅れて終わった日が、1週間に2日出たら、重ねるのをやめる。
- 待ち時間についてのご指摘を1件いただいたら、その組み合わせは止めて、条件1から見直す。
- 重ねた日の最後の施術が、閉店予定時刻を30分超えたら、その日の重ねる件数を1件減らす。
数字は自分の店で決めて構いません。決めておくことの意味は、やめる判断を、その日の気分から切り離すところにあります。撤退ラインがないと、遅れが続いても「今日はたまたま」で続いてしまいます。3か月後に、なぜ疲れているのか説明できない状態になります。
撤退ラインは、紙に書いて予約表の近くに貼っておきます。書いていないラインは、ないのと同じです。
④ 回収できる時間と金額を見積もって、やる・やらないを決める
ここまでで、重ねられる組み合わせと、やめる条件が決まりました。最後に、やる価値があるかどうかを計算します。
計算は4段階です。
(1)1日に生まれる手離れ時間を出す。
1回あたりの手離れ時間 × そのメニューの1日の件数。1回20分のカラーが1日3件なら、60分です。
(2)そのうち、条件を満たして実際に売れる割合を掛ける。
ここが要点です。手離れ時間がそのまま売れることはありません。4つの条件を満たす組み合わせで、かつ相手の予約が都合よく入る、という二重の条件が乗ります。現実的には3〜5割を見ておくと、見積もりが大きく外れません。60分のうち、20分から30分です。
(3)その時間に入る施術の単価を掛ける。
重ねられる施術は、手離れ時間より短いもの、つまり短時間で終わる施術です。多くの店では、単価がいちばん低い部類になります。20分で受けられる施術の単価が3,000円なら、1日3,000円。月に25日営業なら、月75,000円です。
(4)そこから、失うものを引く。
引くのは、遅れて延びた営業時間、声かけが減ったことによるリピートへの影響、自分の消耗です。金額で出せるのは1つ目だけですが、残り2つを0として計算しないことです。
計算してみると、判断が反転する店があります。
重ねない方が利益が残るのは、次のような店です。
- 手離れ時間が1回10分以下の店。10分で受けられる施術はほとんどなく、間に何かを挟むと逆に慌ただしくなります。
- 1件あたりの単価が高い施術を中心にしている店。1件5万円の施術を受けている方の隣に、5,000円の施術を入れて、待ち時間が伸びる。この取引は、客単価の高い施術を選んでくださっている方に対して割が合いません。
- ゆっくり過ごせることを理由に選ばれている店。重ねた時点で、選ばれている理由を自分で削ることになります。
- すでに予約が埋まっている店。重ねなくても枠が売れているなら、増やすべきは単価であって件数ではありません。
重ねる価値が出やすいのは、次のような店です。
- 手離れ時間が1回20分以上あり、ぶれが小さい。
- 短時間で完結する施術がメニューにあり、席や機材を別に確保できる。
- 空いている枠がまだあり、件数を増やす余地がある。
どちらでもない、という結論もあります。その場合は、まず月に数日だけ試して、撤退ラインで判定するのが安全です。全部の日で一斉に始めると、うまくいかなかったときに原因が特定できません。
ひとりサロンの売上の上限は、自分が張り付いていられる時間で決まる
ここでひとつ、私たちが現場を見ていて思うことを書きます。
ひとりで回している店の売上には、はっきりした上限があります。それは営業時間ではありません。自分が施術に張り付いていられる時間です。
この違いは、地味なようでいて大きなものです。営業時間を上限だと思っていると、打ち手は「早く開けて遅く閉める」「休みを減らす」になります。張り付いていられる時間が上限だと分かっていると、打ち手が変わります。張り付かなくてよい工程を見つける、その時間を別のことに使う、あるいは張り付く時間そのものの単価を上げる。
この記事で扱ってきた「重ねる」は、3つのうちの1つでしかありません。しかも、いちばん壊れやすい打ち手です。手が空いているからといって、そこを埋めるのが正解とは限らない。埋めた結果として声かけが減り、仕上げが慌ただしくなり、選ばれていた理由が薄くなるのなら、その時間は空けておくことに使われているとも言えます。
もう1つ。手が離れる時間の使い道は、次のお客様だけではありません。カルテを書く、次回のご提案をまとめる、片付けを済ませる。どれも、あとでまとめてやると営業時間の外にはみ出す作業です。その20分を売るか、その20分で閉店後の20分を買い戻すか。どちらが自分の店にとって得か、という問いの立て方をすると、答えが変わる方は多いはずです。
売上を伸ばす方法として重ねるのではなく、時間の使い道を選び直す。この記事は、そのための材料のつもりで書いています。
重ねる前に確認する10項目
紙に書き写せる形にまとめます。予約表の近くに貼っておける長さにしてあります。
〈重ねる前に確認する10項目〉
- いちばん件数の多いメニューで、手が離れる時間を実測したか(3回以上)。
- その時間の1回あたりの長さと、ぶれ幅を書き出したか。
- 待たせている側は、戻る時刻が5分ずれても差し支えない工程か。
- 入れる施術は、手離れ時間より短いか。
- 入れる施術の最初の数分と、待たせている側の戻ってすぐの工程が、ぶつからないか。
- 席・機材・部屋を、別に確保できるか。
- 2人のお客様が同じ空間にいることを、気にしなくてよい業態・レイアウトか。
- 撤退ラインを、数字で紙に書いたか(遅れ何分・何回で、やめるか)。
- 回収できる金額から、遅れて延びた営業時間を引いても、まだ残るか。
- その20分を売る方が、閉店後の20分を買い戻すよりも得か。
10項目のうち、1から3が空白なら、まだ判断の段階ではありません。1に戻って測るところからです。
やってはいけない重ね方
つまずきやすい点を挙げます。
- 所要時間を実際より短く登録して、枠を空ける。前述のとおりです。空き枠は作れますが、お客様に見えている所要時間・終わりの目安・当日のご案内が全部ずれます。遅れの原因が自分の設定になるので、説明ができません。
- 測る前に、重ねられる組み合わせを決める。「たぶん20分くらい空くはず」で始めると、実測が15分だったときに毎回押します。順番は、測る→決める、です。
- 手離れ時間と同じ長さの施術を入れる。開始と終了がぴったり重なり、片方を待たせます。短いものを選びます。
- 重ねる件数を最初から増やす。1日1件から始めて、撤退ラインに触れないことを確かめてから増やします。3件から始めた場合、うまくいかなかった原因が分かりません。
- 常連の方から試す。関係ができている方なら大丈夫、と考えたくなりますが、逆です。いちばん失いたくない方で試さない。新しい組み合わせは、影響が小さいところから試します。
- 撤退ラインを頭の中だけに置く。書いていないラインは機能しません。紙に書いて、見えるところに貼ります。
- 重ねた日と重ねなかった日を、記録で区別しない。あとで振り返るとき、「最近バタバタしている」以上のことが言えなくなります。カレンダーに印をつけるだけでも構いません。
- 予約の受付時刻の設計を、同時に変える。枠の作り方を2つ同時に変えると、何が原因で回らなくなったのか分からなくなります。締切や受付時間の設計はサロンの予約締切は何時間前まで?受付・変更・キャンセルで分けるにまとめてあるので、時期をずらして進めてください。
- お客様に説明しないまま始める。「今日は別の方の施術が入っています」と一言あるかないかで、待ち時間の受け取られ方が変わります。隠す前提の運用は、続きません。
業態別の差分メモ
同じ判断でも、業態によって重心が変わります。
- 美容室:手が離れる時間がいちばんはっきりしている業態です。もともと複数のお客様が同じフロアにおられるので、条件4はほぼ通ります。要点は条件1で、薬剤の作用時間は戻る時刻が決まっている待ち時間にあたるため、戻りが遅れない範囲の施術しか入れないという線引きになります。シャンプー台のように取り合いになる設備がある場合は、そこが実質の上限です。
- まつげエクステ・ネイル:施術中ずっと手が張り付く工程が長く、手が離れる時間そのものが少ない業態です。乾燥や定着を待つ工程はありますが、1回あたりが短いことが多く、先ほどの回収の計算で「重ねない」に着地しやすい形になります。無理に重ねるより、施術の前後にある準備・片付けの時間を整理する方が、回収できる時間は大きくなります。
- エステ・脱毛:個室でのご案内が前提のことが多く、条件4が効いてきます。同じ空間に他の方の気配がしないことに価値を置いて選ばれているなら、重ねない判断が自然です。機器を使う工程がある場合は、機器の台数がそのまま上限になります。
- 自費の整体・鍼灸など:手技の工程と、機器にお任せする工程が分かれていることが多い業態です。工程で施術台を分けておくと、時間の設計が場所の設計で先に固定されるので、日々の判断が要らなくなります。なお、施術の内容や効果に関する表現は、2025年のあはき柔整の広告ガイドライン改正でホームページやSNS、地図サービスの表示まで規制の対象になっています。予約の案内文に施術の効果を書き添えるのは避け、時間と料金と条件だけを書くようにしてください。
まとめ
手が空いている時間を売るかどうかは、順番を守ると決まります。
まず、いちばん件数の多いメニューを工程に分解して、手が離れる時間を実測します。1回あたりの長さと、ぶれ幅の2つを書き出すところまでが第1段階です。目安の数字を使わず、自分の店で測ります。
次に、4つの条件で判定します。待たせている側の戻る時刻がずれても差し支えないか。入れる側の最初の数分が、待たせている側の手のかかる瞬間とぶつからないか。席・機材・部屋を別に確保できるか。2人のお客様が同じ空間にいることを気にしなくてよい業態か。1つでも欠ければ、その組み合わせは重ねません。
そのうえで、壊れるものを先に書き出し、撤退ラインを数字で決めます。遅れは連鎖し、仕上げは重なり、声かけは減ります。やめる基準を紙に書いておかないと、やめる判断ができません。
最後に、回収できる金額を計算します。手離れ時間の3〜5割が現実的な線で、そこに入るのは単価の低い施術です。手離れ時間が短い店、単価の高い施術が中心の店、ゆっくり過ごせることで選ばれている店では、重ねない方が手元に残ります。
所要時間を実際より短く登録して枠を空けるやり方は、空きは作れますが、お客様に見えている時間が全部ずれます。時間を短く見せるのではなく、工程を分けて考える。この置き換えが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
そして、手が離れる20分の使い道は、次のお客様だけではありません。その20分を売るか、閉店後の20分を買い戻すか。どちらが自分の店にとって得かを、一度だけ計算してみてください。
決めた判断基準を、予約の受け口にそのまま反映する
判断基準が決まっても、予約の受け口が「メニュー1つ=ひとかたまりの時間」のままだと、重ねる運用は手作業で支えることになります。SALONA(サローナ)には同時施術の設定があり、はじめは重ならない状態から始まって、店側が重ねてよいと決めたメニューの組み合わせと、担当できるスタッフを登録した範囲でだけ枠が開きます。無条件に重なるわけではありません。部屋や席、機材を使うメニューは、その数が同時に受けられる上限になります。ここまでで決めた判断基準を、そのまま予約の受け口に写しておく、という使い方です。
よくある質問(FAQ)
Q. カラーの放置中に別のお客様を入れるのは、失礼になりませんか。
A. 業態とレイアウト、そして事前のご案内があるかどうかで変わります。もともと複数のお客様が同じフロアにおられる美容室では、失礼というより「待ち時間に様子を見に来てもらえるかどうか」の問題になることが多い形です。逆に、個室で1対1のご案内を前提にしている業態や、静かに過ごせることを理由に選ばれている店では、重ねること自体がサービスの引き下げになります。判断の分かれ目は、お客様がその店を選んでいる理由です。もし重ねると決めるなら、当日に「別の方の施術が入っています」と一言お伝えして、待ち時間に一度は声をかける。この2つを運用に組み込んでおくと、受け取られ方が変わります。隠す前提の運用は続きません。
Q. 予約システムを使っていなくても、放置時間に別の予約を入れられますか。
A. できます。この記事の判断基準は、紙の予約台帳でもカレンダーアプリでも同じように使えます。実務としては、台帳の1行を「施術者が張り付く時間」と「手が離れる時間」で色や記号を分けて書いておき、後者の時間に短い施術を鉛筆書きで乗せる、という形が扱いやすい方法です。ただし手作業で運用する場合は、重ねられる件数を1日1件までにしておくことをおすすめします。組み合わせの判断を毎回その場でやることになるため、件数が増えるほど間違いが起きます。ツールを使う場合は、重ねてよい組み合わせをどこまで細かく決められるか、席や機材の数を上限として扱えるかを、導入前に確認しておいてください。仕様はツールによって異なります。
Q. 所要時間を実際より短く登録して枠を空けるのは、なぜよくないのですか。
A. 空き枠を作る目的は達成できますが、お客様に見えている情報が3つずれるからです。予約画面や確認メールに表示される所要時間、終わりの目安、そして当日のご案内です。1時間かかる施術を40分と登録すると、次の予定を入れて来られた方が間に合わなくなります。しかも、遅れた理由を説明できません。原因が施術の内容でもお客様の側でもなく、自店の登録内容にあるからです。遅刻や延長の対応ルールを整えていても、この場合は使えません。代わりに、所要時間はそのままにして、そのうち手が離れる部分だけを別の予定として扱う考え方に置き換えてください。多くの予約ツールには、施術時間の一部を「担当者が他の予定に入れる時間」として扱う設定が用意されています。名称や設定できる範囲はツールによって異なるので、お使いのツールで確認してみてください。
運営: 株式会社art crat./SALONA編集部
公開日: 2026-08-12 最終更新: 2026-08-12
本記事のお客様の声は、SALONA利用サロンへのヒアリングに基づき、特定できない形に匿名化して掲載しています(聞き取りやすさのために言い回しを整えています)。
注記: 本記事は予約の枠の設計についてまとめたもので、施術の内容や効果について述べるものではありません。自費の整体・鍼灸などの広告表現は、あはき柔整の広告ガイドラインの対象となります。表示の可否に迷う場合は、所管の窓口や専門家にご確認ください。